
しかし最初のころは、子供たちは恥ずかしがって、数分勉強すると近所のごみ捨て場に走って逃げてしまった。親たちも教育にあまり関心がなく、多くは夜に仕事から疲れて帰宅すると、そのままドアを閉めて寝てしまった。もしくは、弟や妹の世話をする人がいなくなっては困ると、子供に勉強をしてほしくないという人もいた。
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それでもレさんはめげずに下宿に通ったが、1日に4回も出向いてやっと子供たちに会えたということもあった。そして数か月後、子供たちはきちんと座って勉強するようになり、文字を書き、計算ができるようになった。
数年後には生徒の数が増えていき、レさんとホーチミン市青年団の青年労働者支援センター(YEAC)は学生ボランティアを動員して学習の指導にあたることにした。ホーチミン市青年団や地方自治体、そして学校とも連携し、教室の運営をサポートしてもらった。
YEACは下宿施設のオーナーであるドー・タイン・トゥイさん(女性・35歳)と話し合い、教室に充てるスペースを検討した。そして裏庭のごみ捨て場を改修し、大きな防水シートを集めて屋根を作り、古い車輪を再利用して椅子を作った。
こうして識字教室が誕生し、15~20人の生徒が毎週日曜日の朝にここで勉強するようになった。5年が経ち、慈善家が机と椅子、そして生徒たちの朝食も支援してくれるようになった。
現在、教室はトゥードゥック市タオディエン街区とタンフー区タンタイン街区の2か所にある。生徒たちは身分証明書がなかったり、両親に捨てられたり、知的障がいや身体障がいを持っていたり、自ら生計を立てなければならなかったりという事情のある子供たちだ。
トゥイさんによると、タオディエン街区にある下宿施設は10部屋あり、各部屋の広さは20~50m2で、通常はファミリー向けに貸しているという。借り主は主にクメール族で、生計を立てるために田舎から移住してきたものの、経済的に苦しく、収入も不安定で、半数以上の子供たちが学校に通えていない。ただし、外国人が多いタオディエン街区で実際に外国人の客と接することもあるため、外国語の感覚が優れている子供もいる。