「多くの人は私のことを、ITの仕事を辞めて靴磨きを始め、月に1億VND(約60万円)以上稼いでいる人、と認識しているかもしれませんが、実際はそうじゃありません。ITを勉強した私が、ブランドや縫製について学んだからこそ、今のようにやっていけるようになったんです。たくさん学んでこそ、お客さんが持ち込んだ靴がどんなものなのか、どんな素材で作られているのか、修理できるのかどうか判断することができ、お客さんに最適なアドバイスができるんです」とフォンさんは語る。
(C) dantri |
(C) dantri |
(C) dantri |
起業してから約6年が経ち、フォンさんの靴磨き屋は国内外の多くの客に支持されてきた。フォンさんはまた、日々の仕事を動画にしてSNSに投稿している人物としても有名だ。
フォンさんは毎日15~20件の依頼を受ける。特にテト(旧正月)のころの依頼は約30件に増え、あまりに手がいっぱいになると依頼を断らざるを得ないこともある。
「自分が最も得意な革製品の手入れだけを受けています。多くのお客さんがスニーカーを持ち込んできて、手入れ自体は私ももちろんできますが、それでもお断りして、専門店を紹介するようにしています。たくさんの依頼を受ければ収入は増えますが、その分、期限までにお客さんに依頼品をお戻しすることができなくなってしまいますから。サービスの質と店の評判に影響を及ぼすことのないよう、数字にはこだわらないことにしているんです」とフォンさん。
現在、フォンさんの店の料金は、客の要望によって1足につき15万~25万VND(約900~1500)円となっている。路上の靴磨き屋に比べると10倍の料金だが、路上の靴磨き屋では体験できないサービスに価値を見出して、客も惜しまず支払ってくれるのだという。1億VND(約60万円)超えの靴でも数百万VND(100万VND=約6000円)の靴でも、料金は同じだ。
「今、月に2億VND(約120万円)近く稼いでいますが、この道に進もうと決めたときから、路上よりも良質な靴の手入れのサービスを誰もが受けられるように、という思いでやっています。私にとって、もちろんお金を稼ぐことも大事ですが、それ以上に今の私の仕事が、ベトナム人の革靴や革製品に対する扱い方を変える一助になれば、と思っています」。