ブー・ティ・ティエンさんと近所の人たちは、誘い合って、昼食を抜いて東南部地方ビンズオン省からグエットさんの店を訪れた。ティエンさんはベトナムの国の形が描かれた赤いアオザイを選び、「最後にアオザイを仕立てたのがいつだったか、思い出せません。今日はこうしてアオザイを着て、皆からも褒めてもらえて幸せです。少女時代に戻ったみたい」と興奮気味に語った。
(C) vnexpress |
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しかし、活動を始めてから半年が経ったころ、条件に満たない人も0VNDのアオザイを求めに店を訪れるようになったため、グエットさんは0VNDアオザイ店の営業を週に1日だけとすることに決めた。
グエットさんの0VNDアオザイ店は、1年間で5000着以上のアオザイを必要な人に手渡してきた。「離島や山間部から送られてきたアオザイを手に取ると、皆さんの分かち合いの気持ちを感じて涙が出てくるんです」とグエットさんは話す。
店を訪れた60代の女性がアオザイを受け取り、涙を流したこともあった。そのアオザイは、彼女が人生で初めて手にするアオザイだったのだ。その時グエットさんは、どうしてこの活動をもっと早くに始めなかったのかと自責の念に駆られたという。
「与えることよりも与える方法が重要」というのが、グエットさんの活動のモットーだ。老若男女問わず、0VNDアオザイ店を訪れる人たちに、グエットさんと仲間たちは熱心にアドバイスし、気に入ったアオザイを選んでもらえるようにサポートしている。持ち帰られたアオザイは、受け取った人がずっと着続けることもできれば、交換することもできる。
0VNDアオザイ店を始めてから、グエットさんの仕立て屋の収入は減ったものの、だからと言ってこの活動をやめるつもりはない。もし、仕立て屋の後継者がいなければ店を閉じてもいいと思っているが、「0VNDアオザイ店」はずっと続けていくという。「力が尽きるまではこの活動を続けていきます」とグエットさんは力強く語った。