毎日朝早くから夜遅くまでかけてトゥエンさんは20本の刃物を完成させる。トゥエンさんの工房から生み出された20種類以上の刃物や鋏が、世界各地の家庭の台所で使われている。多くの外国人客も刃物を作って持ち帰るため、トゥエンさんの工房を訪れる。
(C) vnexpress |
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鍛冶屋にとって一番大変なのは、蒸し暑い夏の日だ。「1日中、水しか飲まないんです」とトゥエンさん。両耳には常に綿を詰めて機械の音や刃金を叩く音を遮っており、またマスクや帽子で身体を覆っていても外せば鼻も手も真っ黒になっている。「冬に工房内の温度が8度しかなくても、炭塵を吹き飛ばすために扇風機は必須です」と、トゥエンさんは黒ずんだ両手を見せながら語った。
トゥエンさんの長い黒髪がほどかれることはめったにない。さらに、仕事中はいつも顔を覆い隠しているため、化粧っけもない。数年前、首元まで覆える帽子を持っていなかったころ、トゥエンさんの首元は火傷の痕だらけだった。グローブをはめていた手ですら、火の粉が貫通して火傷し、白い斑点の痕が残った。
2020年、トゥエンさんは仕事中の事故で脚を負傷し、2か月間も入院しなければならなくなった。「座っていても、義母は気が気でない様子でした。回復するとすぐに工房に向かい、そのまま仕事を始めました」と、トゥエンさんの義理の娘であるブー・ティ・タムさんは語る。
間もなく定年を迎えるトゥエンさんだが、まだ仕事を辞めるつもりはない。トゥエンさんはこの骨の折れる仕事を通じて、自制心と収入を手にしてきた。「どんな仕事にも難しいことと簡単なことがあります。その中で大変なことばかりを見るのではなく、仕事が与えてくれる喜びを考えて、1日をスタートするほうがいいんですよ」と、トゥエンさんは語った。