2019年の夏、トゥンさんは両親に内緒で胸部の手術を受けた。法事で帰省した際、身体中が包帯で覆われたトゥンさんを見て、親戚や知人はそれほど驚かなかったが、母親だけは「皆に顔向けできないわよ」とメッセージを送ってきた。「息ができないくらい身体が痛むのに、母親のメッセージを読んだらさらに痛みが増しました」とトゥンさん。それでも、自分の選択は間違っていなかったと感じている。
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トゥンさんはトランスジェンダーのコミュニティに参加し、皆が生き生きと積極的に生きられるように啓蒙活動を行うと同時に、同性愛者の健全な性生活についても情報を広めていった。
参加したイベントや知り得たトランスジェンダーに関する知見をソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)でシェアし、コメント欄に母親の名前をタグ付けした。また、LGBTのコミュニティが投稿・シェアした記事があると、すぐに母親に送った。
こうした努力の甲斐あって、母親のタムさんは徐々に子どもたちが本当の自分の人生を生きているのだと理解するようになった。
母親がさらに心を開いた頃、トゥンさんは母親と妹をLGBTのイベントに誘った。そのイベントでステージ上に呼ばれたタムさんは、泣きながらこう語った。「子どもたちが2人ともトランスジェンダーだと知ったときはとても悲しかった。私は孫を抱くことができないのだと。でも、今はトランスジェンダーについて前よりも理解し、事実を受け入れることができるようになりました。幸せに生きられるなら、本当の自分でいていいんです」。
このイベントで、トゥンさんはニーさんに、女性から男性になった友人の1人を紹介した。その友人からアドバイスを受けて、ニーさんは胸部を切除する手術に備えてジムで筋肉を鍛え始めた。「その出会いで、私は自分自身に自信が持てるようになり、自分が変わるための目標もできました」とニーさん。
「兄妹」から「姉弟」になった2人は今、コミュニティでの活動以外にも自分の仕事を持って自立している。ニーさんは、自立して生活し、自分自身を肯定できるよう実家を出た。兄妹は幸せに暮らすだけでなく、働いて収入を得ることで両親を助けることもできている。
「両親が味わった苦しみを補うために、私たちはいつも楽しく幸せに生きるよう努力しています。時には人生の浮き沈みに直面しますが、両親に心配をかけないよう、2人にはあえて打ち明けません」と、今やすっかり女性らしさに満ち溢れたトゥンさんは語った。