トゥンさんがまだ自分について理解できていなかった頃、妹のニーさんがLGBTコミュニティ内の恋愛について描かれた漫画を読んでいるのを目にして、トゥンさんは大きな衝撃を受けた。
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「私は落ち着いて座っていることもできず、手で顔を覆って泣きました。ただでさえ私がこの身体を持って生まれたことは悲劇だったのに、まさか妹まで私と同じだとは思っていなかったんです」とトゥンさんは語る。
トゥンさんは真実を聞くために手紙を書いて妹のかばんに入れたが、妹からの返事は予想とは異なっていた。しかしトゥンさんの女性としての勘が働き、妹の返事は嘘だとわかった。
家族に知られないよう、ニーさんはいつも女の子用のサンダルを履いて登校し、学校に着いてから自分で購入したサンダルに履き替えていた。また、家を出る時には母親が買ってきた子ども用のブラジャーを着け、教室に入る前にトイレでTシャツに着替えていた。大きくなり始めた胸を隠すため、夏にはTシャツを2枚重ねて着て過ごした。
一方、兄のトゥンさんは自分の本来の性別を表現し始めるようになった。20歳の時、トゥンさんはハイフォン市のトランスジェンダーのグループに招かれ、人前でパフォーマンスをした。
この時、トゥンさんは初めてアオザイを着てヒールのある靴を履いたが、恥ずかしい気持ちは少しもなかったという。「パフォーマンスが終わってから、とても幸せな気持ちで記念撮影をしました」とトゥンさん。それからは髪を伸ばし、化粧をしてヒールのある靴を履く機会が日に日に増えていったが、トゥンさんが1人の女性として生きるようになってからは誰かにからかわれることもなくなった。
ある時、妹が学校でいじめられていると聞いたトゥンさんは、妹を助けるために急いで学校に向かった。その帰り道、「ニーは女の子が好きなの?」と尋ねると、ニーさんはその問いには答えずに「じゃあお兄ちゃんは男の子が好き?」と聞き返し、お互い返事はせずに2人で笑い合った。
「私は孤独じゃないんだとわかりました」とニーさん。その一件の後、トゥンさんは妹を美容室に連れて行き、母親が誇りにしていた妹の長い髪の毛を短くした。当時すでに両親は離婚しており、兄妹は父親と一緒に暮らしていた。髪を短くして帰ると、父親はニーさんを殴ろうとしたが、兄が守ってくれるとわかっていたニーさんはもはや父親の脅しなど恐れなかった。
トゥンさんはキムという名前に改名し、女性であることを公表した。ニーさんもビン・ニーと改名し、男性として生活するようになった。子供たちの日々の変化を目の当たりにし、父親は徐々に状況を受け入れていったが、母親はまだ2人を認めることができなかった。