早速、真っ赤な生地を買いアオザイを仕立てた。ホーチミン市へ戻ると中古のスピーカーを買って賑やかなテトの音楽を流し、踊りながらお菓子を売り始めた。ぽっこり出たお腹に鮮やかな赤いアオザイを着て踊る姿は人目を惹き、瞬く間に通りの名物オヤジとなった。お菓子を買ってくれた客にはテトのお祝いの言葉も忘れない。
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「踊りを習ったことなんてないですよ。歌手のダム・ビン・フンさんやコメディアンのチャン・タインさんが踊るのをテレビで観て、見よう見まねで踊っているんです。それでも、チャチャチャやルンバだって踊れますよ」とチャインさん。
踊りは行き交う人々の楽しいテトに花を添えるだけでなく、お菓子を買ってくれる客も増え、子供たちを養う足しになる。初めは3人の子供たちも、どうして変な踊りなんか踊るのかと否定的だったが、将来大きくなった時に父親なりの想いを理解してくれるだろうとチャインさんは信じている。
毎朝8時に出発し、古い自転車をこいでお菓子を売り歩いていたチャインさんだったが、その姿に胸を打たれた人が古いバイクを譲ってくれたという。それ以降は1区のグエンティミンカイ(Nguyen Thi Minh Khai)通りと8月革命(Cach Mang Thang Tam)通りの十字路や、3区のボーティサウ(Vo Thi Sau)通りとバーフエンタインクアン(Ba Huyen Thanh Quan)通りの十字路、時には4区のグエンフウハオ(Nguyen Huu Hao)通りとホアンジエウ(Hoan Dieu)通りの十字路などを巡り、お菓子を売るようになった。
歩道に座って売っていると頻繁に取り締まりにあうため、1か所に長居はしない。ある時はスピーカーやタイヤを没収されて、やっとの思いで返してもらったという。「違反だとは知っていますが、生活が苦しくやむを得ないんです。だからお菓子もバイクも通りを行く人の迷惑にならないように気を付けています」。