彼らは1時間以上かけて脛、腿、腕、肋骨、頭蓋骨を探しあて、ビニールシートの上に並べた。しきたりによると、まず頭蓋骨を赤ワインで丁寧に3回洗い、手ぬぐいで拭く。その他の骨も順番に洗って、足、腕、肋骨、肩甲骨の順に骨壷に納めていく。最後に頭蓋骨を手に取り、祈りを唱えてから一番上に置いた。骨壷は、遺族に引き渡すか、指示された新しい墓に納骨するのだという。
(C) Lao Dong, 棺桶から骨を取り出すナムさん |
ナムさんは、「死者たちのお陰で金をもらって生活しているが、死者を敬う心がなければできない神聖な仕事。霊魂に関わることだから、決して間違いがあってはならない」と語った。
喪主を務めたことのあるマイ・バン・ズオンさんは、「改葬は神聖なものであると同時に極めて非衛生的。以前は、人が亡くなるたびに親族の誰かが改葬したが、今はプロに頼んでいる」と言う。費用はだいたい50万~60万ドン(約2500~3000円)だという。
改葬の習慣が薄気味悪く非衛生的であるとはわかっていても、行わないことで何か祟りがあるかもしれないと思うとやらないわけにはいかない。洗骨のプロが「有毒な微生物」のリスクを肩代わりしてくれることで、親族は危険にさらされることなく、祟りの心配もなくなる。つまり、洗骨請負人の仕事とは、死者のためというより、生きている人の心に安らぎを与えることだと言えるだろう。