北中部クアンチ省ドンハー市在住の地雷被害者の男性グエン・ドゥック・フインさん(25歳)は、同じような境遇にある人達のためにも、自らの人生を変えたいと奮闘している。指先で揺ら揺らゆれながらバランスをとる色とりどりの竹とんぼに願いを込めて。※ベトナムの「竹とんぼ」は竹でできたトンボのおもちゃで、指先などに載せて遊ぶ。
(C) thanhnien, グエン・ドゥック・フインさん(左)とミスベトナムのトゥイ・バン(右) |
フインさんは地雷の爆発により、顔などに大やけどを負ったが、塞ぎ込むこともない快活な性格の持ち主だ。決して卑屈になることはなく、自信に溢れ、常に毅然とした態度をとっている。彼は、徐々に現実に近づいてきた自身の夢について力強く語ってくれた。
彼が悲劇に見舞われたのは幼年時代のことだ。地雷というベトナム戦争の置き土産は、彼の幼年時代を奪い去り、病床で生死をさまよう日々へと陥れた。その後、なんとか一命はとりとめ、心ある人たちの支えと医学の進歩のおかげで、彼は「顔」を取り戻したが、当然元通りのものではなかった。
成長した彼はハノイ電力短期大学で学んだが、卒業後就職先を見つけることは出来なかった。不採用の理由は殆どが彼の外見によるものだった。将来に不安を募らせる日々が続く中、ふと立ち寄った土産物屋で見つけた色鮮やかな竹とんぼが、彼に子供時代の記憶をよみがえらせた。
「誰しも生まれてきてすぐに色々なことが自分で出来るわけではなく、師を探すものです。あの日、偶然見かけた竹とんぼが私に道を示してくれました。あれ以来、私の頭は竹とんぼのことしか考えられなくなっています。竹を選び、成形して組み立て、彩色し納得の行く形に仕上げる。他の職人たちから褒めてもらえれば上出来です」フインさんはそう語る。