ディエムさんは、死因究明のために遺体の解剖をする医師の助手も務める。ばらばらにされた内蔵や体の一部をホルマリンの瓶に入れる仕事で、慣れないうちは悪夢に悩まされた。交通事故などで無残な姿になった遺体を回収するのも役目の一つだ。多くの人がこの仕事に就いて半月も経たずに止めてしまうのは、これに耐えられないためだという。
(C)Dan tri, 遺体安置冷蔵庫の前で |
経済の発展に伴って、ディエムさんは遺族から遺体の見栄えを整えるよう頼まれることが多くなった。当初は遺体を洗浄し経帷子(きょうかたびら)を着せるだけだったが、やがて髭剃りや白粉、爪切り、眉毛の手入れまで頼まれるようになり、死化粧の専門家になっていった。白粉のことさえ何も知らない状態から、お化粧上手のどんな女性にも引けを取らないほどの腕前になることなど、想像もつかなかったという。
ディエムさんはこの20年余りを振り返って、「たとえ勇気があっても、心がなければこの仕事はできません。これは人を幸福にする徳のある仕事だと、そう自分を励ましながら続けています」と語った。