ホーチミン市ビンタイン区に住む59歳のチャン・ゴック・アインさんは、30年間以上にわたり無償で死人に化粧を施してきた。事故や老衰で死んだ人、そして何年間も放置され腐敗した遺体にも対面してきたアインさん。この仕事を始めてからこれまでに、何人の死化粧を手掛けたのかは覚えていないという。
(C) thanhnien |
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アインさんは15歳の時に、近所で誰か亡くなるといつもその家まで行き、死化粧の方法を見ていた。習慣のように毎回お葬式に顔を出して死化粧を見るうちに、いつの間にかこの世界に入っていた。この仕事には学校もなく、先生もいない。アインさんは自分で学び、実地での経験を積んだ。そんな彼のことを「プロの美容専門家」と呼ぶ人もいる。
アインさんは、思い出しながら教えてくれた。「以前、私は交通事故に遭い、ホーチミン市のチョーライ病院に入院していました。入院中は1人で寂しかったので、隣のベッドに入院していたおじいさんと話をして、とても仲良くなりました。退院後におじいさんの家へ遊びに行き、おじいさんの具合が良くないことを知りました。おじいさんには親戚がいなかったので、私は毎日家へ行き、お風呂に入れたり食事を食べさせたりしていました。以前から私はご遺体への死化粧の方法を勉強していたので、おじいさんが亡くなるとご遺体を布で包み、アルコールで体を拭き 、きれいにしてから死化粧を施しました」。
そして、1984年の仕事が一番印象に残っている、とアインさんは笑いながら続けた。当時、アインさんはフーニュアン区からチョーライ病院まで毎日歩いて通い、ある不運な人の世話をしていた。