「彼は経済状況が苦しかったため妻に捨てられ、悲しみのあまり病気になってしまったのです。彼の紆余曲折な人生の話を聞き、私は放っておくわけにいきませんでした。毎日数十km歩いて彼の世話をしに行き、話を聞いて慰めました。彼が亡くなった時、私はまた死化粧を施し、葬式も手配しました」。
(C) thanhnien |
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「なぜ生きている人ではなく、ご遺体へ化粧をする仕事を選んだのですか?怖くはないですか?」と聞かれると、アインさんは笑いながら、「もし怖くないといえば嘘になります。怖いですよ!でもこの仕事が好きなのです。交通事故死や水死によるご遺体、また腐敗が進んだご遺体はあえてあまり見ないようにしますが、やはり逃げ出したくもなります。それでも、仕事への愛と亡くなった方々の運命を思う気持ちから、死化粧を施さずにはいられないのです。私はその人がお金持ちか貧しいかを問わず、完全に無償で死化粧を行っています」と話してくれた。
死者の淡く青白い輪郭は、アインさんの手にかかると自然なピンク色になり、穏やかさを帯びる。アインさんは全ての作業を誠心誠意行う。アインさんにとって、人の喜びは自分の幸せなのだという。
アインさんの特殊な仕事は、日に日に多くの人に知られるようになった。はじめ、彼は自分の住んでいる周辺の地域でだけ仕事をしていたが、次第に評判が広がり、遠方の地域からも仕事を依頼されるようになった。
アインさんはどこに行くにも仕事カバンを相棒のように携えている。また、遠方の地域に仕事に出かけた時、貧しくてお葬式を上げることができない弱ったお年寄りを見かけると見過ごすことができず、その土地で少し足を止めることも多々あるのだという。