ベトナム戦争中の1972年4月16日、ハノイ市から50キロほど離れた地点の上空で米軍パイロットのダン・チェリー氏はベトナムの戦闘機ミグ21を撃墜した。燃え盛る飛行機の操縦室から落下傘で脱出したベトナム人パイロットがその後どうなったのか、チェリー氏はずっと気になっていたという。
運命の日から36年の年月を経た2008年4月5日夜、チェリー氏とベトナム人パイロットはベトナムテレビ(VTV)の人探し番組で再会した。チェリー氏が捜していた勇敢なパイロットは、名をグエン・ホン・ミーといい、現在はハノイで暮らしている。戦闘で両腕を骨折したため、彼は空軍を去ることを余儀なくされた。かつての敵に対面したホン・ミー氏は開口一番、「あの時はあなたに負けたけれど、結局私たちの国は勝ちましたよ」と言って笑った。
彼の友好的な態度にチェリー氏は驚いたようだった。番組終了後にチェリー氏は、「アメリカへ帰った後も、彼は生きているだろうかといつも気にかけていました。この番組から連絡を受けた時、彼が私を恨んでいるのではないかと心配しました。しかし今、彼がこうして幸せに暮らしていることを知って本当にうれしく思います」と語った。
この番組では珍しく、今回は涙なしの再会となった。ほほ笑みと暖かい握手が交わされ、かつて敵同士だった2人の戦闘機パイロットは、互いを友と呼び合う仲になった。チェリー氏は「私たちの友情が、ベトナムとアメリカの関係にいくらかでも貢献することができればと思います」と語ってテレビ局を後にした。