ネットサーフィンをしていたら、ベトナム人創作折り紙作家ズイ・グエン(Duy Nguyen)の新刊「折り紙デラックスブック&ギフトセット」(スターリング社、2007年11月出版)を偶然見つけることができた。ズイ・グエンはベトナム系アメリカ人で、現在ワシントン州エベレット在住、今回の本は彼の18番目の作品集だ。
彼の折り紙本は、ジャングルに住む動物、水生動物、鳥類、恐竜といったようにテーマごとに分かれていて、その範囲は広く空想上の動物にまで及んでいる。以前に出版した「ドル札を使った折り紙」と「ドル札を使った紙飛行機」という2冊の本では、お札を使うという斬新な方法を打ち出したが、今回はのりやはさみを使った創作折り紙を紹介している。
「シアトルタイムズ」紙のインタビューによると、彼は10歳のころ折り紙に熱中しすぎて、先生に怒られたのだという。先生は折っていたものを取り上げて、「こんなことは時間の無駄です。これでは食べていけないでしょう」とクラス全員の前でしかった。その後長い間、彼は折り紙に触れることを自らに禁じていた。1977年にアリゾナへ引っ越してからのある日、彼は宇宙戦争がテーマの映画を見にいった。「それを見ていたら急に折り紙熱が目を覚ましました。映画の登場人物を折ってみたくてたまらなくなったのです」
それでも、先生に言われた言葉が気になって仕方がなかった。彼は堅実な仕事に就くため、専門学校と大学で設計学と建築学を学ぶことにした。その後アリゾナの会社に就職し、何本もの橋の設計に関わるが、その際折り紙で試作して完成時の見栄えを確かめるようになった。やがて彼は終業後にパソコンを使って折り紙の折り方を紹介する本を書き始め、カラーで仕上げたその原稿をニューヨークの出版社スターリング社に送る。こうして2001年12月、彼にとって初めての創作折り紙本「ファンタジー・オリガミ」が出版された。それ以降、これまでに18冊もの折り紙本が刊行されている。
彼は会社を退職し、家族と共に現在の住まいであるエベレットに転居、折り紙本の執筆や展覧会開催などで忙しい日々を送っているという。最後にズイ・グエンはこう語った。「今でも子どものようなものです。母にはいつも『大人になりなさい』と言われていましたが、今ならこう答えるでしょう。『折り紙はお金を稼ぐためだけのものじゃないんだ。社会に貢献するものなんだよ。きっと10年後にも僕の本はすたれていないはずだよ』とね」