韓国のソウル中央地方裁判所が2月上旬、ベトナム戦争時に韓国軍によって家族を虐殺されたベトナム人女性グエン・ティ・タインさんに対する賠償金の支払いを韓国政府に命じる判決を下した件で、韓国国防部が控訴したことが分かった。
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韓国国防部はプレスリリースの中で、「事実に基づいた控訴審の判決に向けて、裁定プロセスに全面的に協力し、関連当局と引き続き相談していく」と述べた。
一審裁判の判決では、1968年に韓国軍海兵隊第2旅団(青龍部隊)がベトナム南中部沿岸地方クアンナム省ディエンアン村(xa Dien An)フォンニャット・フォンニ集落で住民74人を殺害した際、タインさんを銃撃して家族を殺害したと認定。タインさんは個人として2020年に訴訟を起こし、韓国政府を提訴した。
ソウル中央地裁は一審裁判でタインさんに対する3000万ウォン(約310万円)の支払いを韓国政府に命じる判決を言い渡した。韓国の裁判所が、ベトナムでの虐殺事件の被害者に対し、韓国政府の賠償責任を認めたのはこれが初めて。
ソウル中央地方裁判所は、複数人の証言や証拠を審査し、「韓国軍による虐殺で原告が家族を失い、自身も重傷を負ったことは事実。このような行為は明らかに違法だ」と結論付けた。
タインさんは2015年4月、韓国の博物館の招きによりソウルを訪れ、虐殺の経験についてスピーチを行った。この際、ベトナム戦争に従軍したある韓国人僧侶が土下座して謝罪したが、ベトナム戦争に参戦した多くの退役軍人は、タインさんの話は「でっち上げ」だとして否定している。
韓国軍はベトナム戦争時に南中部沿岸地方ビンディン省、同ニントゥアン省、同フーイエン省、同クアンガイ省で何千人もの民間人を虐殺したとされている。ベトナム戦争における韓国軍の虐殺について長年にわたり調査を続けてきた韓国人ジャーナリスト・歴史研究者のク・スジョン氏の調査によると、韓国軍による虐殺で死亡したベトナム人の数は9000人に上るという。