南中部沿岸地方クアンナム省ナムチャーミー郡タックロイ村は、周囲を高い山々と幅70mのチャン川に囲まれており、外界から孤立した村だ。村民は、通勤・通学の際、タイヤチューブをボート代わりにして、年中流れの速いこの川を行き来している。
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タックロイ村には、少数民族カゾン族が約30世帯暮らしており、人口は100人余り。他の多くの少数民族村と同じく、国内で最も貧しい村の一つだ。幅70mの川を越えれば、省都タムキー市まで向かうバスに乗ることができ、約10分で中心部に到着する。山を越えた場合は6時間もかかるため、大幅な時間短縮になる。
村民は以前、通勤や通学、買い出しの際、服をビニール袋に入れて泳いで川を渡っていたが、水難死亡事故が相次いだため、タイヤチューブで川を渡るようになった。船頭役は村の健康な若者が務め、タイヤチューブを押して、村民を向こう岸まで運ぶ。
この作業、乾季は比較的楽だが、雨季は川の水が増えるため、かなりの重労働となる。幸いまだ事故は起きていないが、以前たくさんあったタイヤチューブは穴が空いてしまい、現在は1本しか残っていないため、定員1人のこの方法では限界があり、急ぎの人は今でも泳いで川を渡っている。
タックロイ村以外にも、この地域では橋が架かっていない、または橋まで遠いという理由で、タイヤチューブを使って川を渡る村民は多い。同地方自治体の代表者は、「小舟を渡す計画もあったが、その場合は管理費や通行料も発生するため、貧しい村民には負担が大きいことから、まだ実現していない」と述べた。