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東南部地方ビンフオック省ドンソアイ市の住宅地に1台の車が停まった。開いたドアから出てきた若者は、立ち尽くす女性に駆け寄り、ひしと抱きしめた。
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その様子を、ニコニコと携帯電話で撮影するのは、米国カリフォルニア州サンディエゴに住む米国人女性ホープさん(51歳)だ。
「会いたかった」。青年を抱きしめる女性リエンさん(37歳)の頬を涙がつたう。面長の顔に太い眉、目、鼻、口、まるで夫と瓜二つの青年を見ると、18年間の苦しみはたちまちに消えた。
その母の肩を、サミュエルことグエン・レ・フン(18歳)がそっとたたく。
リエンさんは、この数日は様々な想いが胸を駆け巡り、眠れなかったという。我が子を孤児にさせてしまった自分に対する怒り、そして、我が子が自分を抱きしめてくれるだろうかという不安。「でも私を見ると、あの子が駆け寄ってきて、ぎゅっと抱きしめてくれました。これ以上幸せなことなどありません」とリエンさんは言う。
彼女が双子をやどしたのは2004年のこと。だが妊娠6か月目に破水、未熟児で生まれた息子たちは弱々しく、血腫もあった。命を救うべく医師は彼らを、町病院から省で一番大きい病院へと移し、そして2人は最終的には、ホーチミン市第1小児病院の保育器に入る。
リエンさんは出産後、力尽き果て、ベッドに横たわるしかなかった。我が子の顔を見ることもかなわず、目には涙が溢れた。その後、子供の世話はすべて、夫や家族、親戚の手で行われることになったのだが、夫のレ・スアン・フンさんによると、当時、家は貧しく治療費も出せなかったため、仕方なく子供たちを病院に預け、スアン・フンさんはビンフオック省に戻った。
それから1か月ほどしてスアン・フンさんが病院を訪ねると、そこに我が子の姿はなかった。「尋ねると、お兄ちゃん(=サミュエル)はゴーバップ区の孤児院に預けられたと知らされました。弟の行方はわかりません。生きているのか、そうでないのかさえ…」とスアン・フンさん。