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ヒエウさんは3つの大学に願書を提出し、すべてに合格した。結果を受け取った日、ガイさんは大喜びで、近所の人たちにも報告して回った。しかし、夜になるとガイさんは泣いていた。大学の学費をどう捻出すればよいのか困り果てていたからだ。
そこでガイさんは、家のビンロウジが間もなく収穫期を迎えることを思い出した。「ビンロウジを売って300万VND(約1万5300円)になり、残り700万VND(約3万5700円)を借りれば入学金が払える」とガイさんはほっとした。しかしまさにその夜、近所中のビンロウジが盗まれ、ガイさんの希望だった300万VND(約1万5300円)も消えてしまった。
入学金の支払い期限が近づき、家にお金がないことを悟ったヒエウさんは、遠くの大学に行ってしまえば祖母と母親の世話をする人がいなくなるからと理由をつけて、大学進学を諦めようとした。
それを知ったガイさんは涙をぬぐい、近所の人たちにお金を借りに行った。皆、一家の事情を知っていたため、誰も利息は取らず、返せるときに返せばよいからと快く貸してくれた。
キートバック村落の長であるグエン・バン・アンさんは「たくさんの人が君のことを愛しているんだから、君も頑張らないと」とヒエウさんを何度も励ました。
こうして無事に大学生になったヒエウさんだが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響でまだホーチミン市に行くことができず、クアンガイ省の自宅でオンライン授業を受けている。時間が空けば料理や母親の世話など、祖母を手伝っている。
ヒエウさんはホーチミン市に引っ越したらアルバイトをして自立しようと考えている。「自分ももう大人ですし、これ以上祖母に負担をかけたくありませんから」とヒエウさん。先生たちは授業料の免除を受けるための書類を準備しているが、もし申請が通らなければ4年間の学費は銀行から借りるつもりだ。
他の学生は大学を4年で卒業するが、ヒエウさんの場合は5年、6年かかるかもしれない。「もし祖母や母が病気になったら、休学して看病をしに地元に帰り、その後にまた復学するつもりです」。
大学を卒業するまでの道のりは友人たちよりも長くなるかもしれないが、ヒエウさんが1つだけ心に決めていることがある。それは、「勉強を途中で辞めず、最後まで頑張ること」だ。
「望んでいることはただ1つ、働きに出て母の病気を治すためのお金を稼ぎ、1度でいいから母に息子として呼び掛けられたいんです」とヒエウさんは語った。