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ホーチミン市3区リーチンタン(Ly Chinh Thang)通りの路地裏に暮らすボー・バン・ザンさん(男性・60歳)は、古本を修理・修復する仕事に就いて40年余りになる。ザンさんは、ホーチミン市でこの仕事をまだ続けている唯一の人物とされる。自宅が仕事場で、客たちからは「本のお医者さん」と呼ばれている。
15歳の時、製本の仕事に魅了され、友人の家族が営む印刷工場で作業の手伝いをさせてほしいと申し出た。1978年に高校を卒業したが、大学入学試験は受けなかった。それからザンさんは協同組合の印刷工場の従業員となり、新しい本の製本や古本の修復を担当した。
「2歳のときにポリオにかかり右脚に障害を負ったため、文学を教える先生になることができませんでした。製本の仕事であれば私の健康状態に適していると思い、この仕事を選びました」とザンさんは振り返る。
客が古本を持ってくると、損傷の程度に応じて様々な方法で修復する。しかし、ザンさんのもとにやってくる「病人」のほとんどは状態が非常に悪く、「大手術」が必要になる。こうした状態の悪い本は、注意深くページごとに分解し、きれいにして元通りに並べ直し、背の部分にのこぎりで2本の線を切り込み、穴を開けて針と糸で縫っていく。
ザンさんによると、1980~1990年ごろは古本修復の仕事が非常に流行していた。当時は多くの人が本に夢中で、古くなれば直してもらいに行っていた。インターネットが普及すると、読書の習慣が廃れていき、ザンさんのところにくる客も減っていった。