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ステージで演技する様子をタンさんの母親が遠くから心配そうに見守る。「私はテレビでさえ、タンが演技するのを恐くて見ることができません。1演目するごとに成功を祈っています。世の中にはたくさん仕事があるのに、どうしてもっと普通の仕事をしないのか…」。身体を張った危険な芸にを見慣れることはなく、いつの時も気が気でないのが母心だ。
そんな母親をよそにタンさんはこう笑う。「大変といえば大変ですけれど、楽しいですよ。メコンデルタ地方へ行けばどこの家からも食事に招かれるし、泊まっていくようにも言ってくれます」。
ある巡業でコメディ俳優のバン・ソンさんに会った時に「人にはそれぞれ向いた芸事がある。君はコメディは演じられないかもしれないが、僕も君のように曲芸はできないからね。お互いに芸を突き進めようじゃないか」と言葉を交わしたこともあるという。
タンさんは2年前に離婚を経験している。妻は毎度タンさんの傷を目の当たりにして耐えられなくなったのだという。「彼女にはより良い生活を選ぶ権利があるから仕方がないよ」と語る顔には寂しさが伺える。2人の子供はタンさんの元に残り、長男はマジシャンになった。タンさんは自らの芸を継ぐことを勧めはしないが禁止することもできないという。しかし、仮にタンさんのように曲芸をしたいと申し出たら、かつての自分がしてもらったように手取り足取り伝授するつもりだ。
「疲れた時には普通の人みたいに8時間働いて夜は楽しく呑みたいって思うことだってありますよ。この仕事は酔ってなんかやったら危なくて仕方がないですからね」とタンさんは笑う。とはいえ、タンさんの芸に対する思いは熱い。「この仕事、飯を食べていくための剣を授かったからには芸に身を捧げるのみです。剣を置くのは芸を尽くした時ですね」。