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死に直面
これまでの試練を乗り越えてきてもなお、エベレスト征服はニエンさんの想像を超える過酷な闘いだった。統計によれば、エベレスト征服の道中で命を落とした人々は全登山者の6.5%。この数字は「世界の屋根」であるエベレスト征服の道のりがどれほど死と隣り合わせであるかを知るのに十分な数字だ。
「エベレストの過酷さをうまく表すことはできませんが、毎日、私たちは死に直面していました。長く座りすぎると寒さで死に、また早く歩きすぎても耐えられずに死んでしまいます。酸素ボンベが足りなくなっても死に、足を滑らせても死にます」。
「普通、人々は『登山』という言葉を使いますが、エベレストは『足を引きずって歩く』という言葉の方がより当てはまります。一歩進むために30分かかることもたくさんありました。エベレストでは酸素が薄く、呼吸をするのも困難です。私たち登山隊の多くのメンバーが登り始めた段階ですぐに後悔し、パニックに陥り、落ち着きを失いました」とニエンさんは教えてくれた。
ニエンさんの場合、エベレスト山頂に到達する前の最終段階でもっとも恐ろしい感情が沸き上がったという。寒さで全身の感覚がなくなり、また彼のサポートをする人が遅れていたため、酸素ボンベもなかった。そして、疲れ果てて体を休めている時、近くに2人の遺体を発見してしまった(エベレストには多くの遺体が凍ったまま残されている)。
「私もこうした人々と同じように死んでしまうのだろう、と考えました。その時、私は山頂に到達すること、賞金を手にすること、生き残ることなど、遠く離れた目標について考えることができませんでした。最終的に、私は一歩一歩足を進めること、それだけを考えていました」。
それからニエンさんに奇跡が訪れ、同行していたインド人の仲間の助けを借りて、彼はエベレスト登頂に成功し、無事に帰還することができた。こうして「エベレストを征服した最年少のベトナム人」が誕生することとなった。