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5000VNDのためにエベレストへ
貧しい家庭に生まれたニエンさんがスポーツを始めたのは、純粋に将来を考えてのことだった。「子供の頃、就職するためには大学を卒業しなければならないことは知っていました。勉強の成績があまり良くなかった私は、体育大学で勉強することを選びました。それでも入学試験にはとても苦労し、なんとか合格できました」とニエンさん。そしてエベレスト征服までの道のりも、この現実的な考え方から始まった。
エベレストに登るベトナム人の募集が始まった時、ニエンさんは友人から選考に参加しようと誘われた。「行きは主催者が車を手配してくれ、帰りは交通費として5000VND(約23.9円)のバス代が出ることになっていましたが、当時のバス代は3000VND(約14.3円)だったので得だと感じ、私はウェイターの仕事を休んで選考に参加することにしました。まさか選考を通過するなんて考えてもいませんでした」。
こうして、ニエンさんは一歩一歩エベレストに近付いていった。数千人の応募の中から12人が選ばれ、数か月にも及ぶ過酷なトレーニングの末、最終的に4人が選ばれた。
エベレストに登る前に、ニエンさんとチームのメンバーは、西北部地方ラオカイ省にあるベトナム最高峰のファンシーパン山(Fansipan、標高3143m)、マレーシアのボルネオ島にあるキナバル山(標高4095m)、タンザニアにあるキリマンジャロ(標高5895m)、ネパールにあるアイランドピーク(標高6160m)と順番に登り、徐々に力を試していった。
1つの山を制覇するたびに、ニエンさんたちは資金を受け取ることができた。このように、当初はニエンさんにとってエベレスト征服は自分の生活を変えるためのものでしかなかった。