(C) thanhnien, 現在のランさん |
仕掛けておいた罠をしゃがみこんで覗き、一匹の野ネズミが掛かっているのを見つけると、ランさんは嬉しそうに笑った。そこでしばらく過ごした後、ランさんは5kgのキャッサバを掘り、それが終わると今度は帰ってから豚に食べさせるための野菜を採った。ランさんは山道をちょこちょこと30分ほど歩き、小屋に「戦利品」を置き、それからまたすぐに山菜を採りに行った。
午後、太陽が山の後ろに隠れる前に帰宅すると、ランさんは籠を台所に置き、急いで豚に餌をやった。ランさんが飼育するのは豚と鶏だけで、牛や水牛には見向きもしない。牛や水牛は見るのも怖いので飼わないのだとチーさんが教えてくれた。
「森の人」が孤独な時
ジャングルから村の生活に戻って6年が経ち、村の皆がランさんの結婚を待ちわびている。人生の半分を過ぎても未だに一人で森の中にいるのは寂しい。「恐らく兄に寄り添うことは誰でも難しいでしょう。兄は苦労してきましたが、森の中で長く暮らし過ぎたため及び腰です。さらに兄はすでに歳をとっているので、ちょうど良い頃合いの女性は村にはいないのです」と弟のチーさん。
チーさんによると、ランさんは今でも森を恋しがっているのだという。先日も数kgの米を抱えて森に出掛け、何日間も戻らなかった。
山の中腹にある簡素な小屋の中には、ランさんの手で摘み取られた数束の野菜と、ランさんの荷物が置かれている。チーさんは「森の中での暮らしで、兄は何でもできます。狩りに行き、終わると鉈を担ぎ、夜まで薪割りをします。そして村に帰ってから商人に売りに行くのです」と語る。
夜な夜な、ランさんは村の中で打ち明け話ができる人を探してふらふらと出掛ける。何人かの老人が彼のはっきりとしない言葉に耳を傾けてくれるだけだが、緑茶と檳榔の実は、この酒席のようなお茶会に欠かすことができない。
テト(旧正月)の数日間、ランさんも他の人に倣って春を祝う挨拶に出掛けた。ランさんはこっちの家にあっちの家にと全ての家を訪問し、終わると親戚の家へ遊びに行った。「兄は村へ戻ってからお酒を知ってもう長いですが、悪酔いしないように気をつけて飲んでいます」とチーさん。