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建設現場から取り外されたばかりのネットには、まだセメントとロープがついたままになっている。一部のセメントは硬い塊になってしまっているため、木製ハンマーを使って叩き落とす。叩く時は、ネットに傷をつけないようにちょうど良い力加減でなくてはならない。ロープにこびりついた頑固なセメントの塊はナイフを使って削ぎ落とす。
ネット洗浄エリアでは、かなりの重量になるネットを洗濯槽から引き上げ、乾燥機に入れていく。この工程が一番労力のかかる作業になるため、工場内のほとんどの男性がこの工程に集中している。
ネット修繕作業に使う道具は、ネットを縫うための針、糸、テープ、ライターとシンプルなものだ。これらの全ての道具は日本側から支給されている。余った道具や穴が多すぎて修復不可能なネットは破棄され、作業員が家に持ち帰ったりすることはできない。また、日本側は毎年、修繕技術を教えるため専門家を工場に派遣している。
副監督のニュンさんによると、この仕事は給与が1か月400万VND(約2万0300円)前後とあまり高くないが、安定しており、また日本の技術を身につけることができるため、応募する人はとても多いそうだ。求人を出した翌日にはすでに採用者が決定しているほどだという。
第3グループ長のニャンさんは、この仕事をしながらたった1人で2人の子供を養っている。ニャンさんの夫が亡くなった時、ニャンさんは2人目の子供を妊娠中だったが、1人で家計を支えなくてはならなかった。「安定した仕事のおかげで子供のためのお金を稼ぐことができています。現在、子供の1人は学校を出て働き始め、もう1人は薬学を勉強しています」とニャンさんは教えてくれた。
ベンチェ省労働傷病兵社会局のグエン・ミン・ラップ局長によると、ベンチェ省にあるこの工場は、ベトナムで唯一の日本向け建設用防護ネット修繕工場なのだという。ネット修繕工場は毎年300万USD(約3億4200万円)の売上高を出し、地域で300人程度の雇用を生み出している。これまで22年間の受注を通じて品質に対する信頼と保証を得ており、更に長年に及ぶ パートナー関係の構築により、ベンチェ省はベトナムと日本の友好関係の1翼をも担っている。