(C) thanhnien, Nguyen Mi 写真の拡大 |
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昔も今も、ホーチミン市の人は何か探しものがあると、特別なものから日用品まで何でも揃うベンタイン市場に足を運ぶ。100年の歴史を有し、同市のシンボルとして有名なこの市場に、50年来続く広さ1.5m2ほどの木靴(木製サンダル)屋がある。女主人は70歳をとうに超えている。
同市3区バンコー(Ban Co)通りに住むグエン・ティ・リエンさんは、ベンタイン市場内で店を営んでいる最高齢の木靴職人だ。「木靴作りの仕事を始めて50年以上になります。最初は伯母に習いながら作っていましたが、伯母が亡くなってこの店を継ぎました」。
彼女はこの50年間、朝に店を開けてから夜に市場が閉まるまで、夢中で仕事に打ち込んできた。ここ数年は、年もとり、木靴もそれほど売れなくなったが、毎日変わらず仕事を続けている。以前と1つだけ違うところといえば、かつてのように朝早くから店を開けることはせず、午前10時を少し回ったぐらいにようやく店を開けるようになったことだ。
店に来た客は、まず靴底のデザインを選ぶ。リエンさんは客の足のサイズを測り、客は次にストラップ部分を選ぶ。そして、リエンさんが客の足のサイズに合わせて木靴を組み立てていく。70歳を超えているとはいえ、彼女の作業は素早く正確だ。こうしてでき上がった木靴は、客の足にぴったりと馴染む。
木靴を打つ音の中で彼女はこう語ってくれた。「1970年代から1980年代にかけて、木靴はとても人気だったんですよ。毎日お客さんのために木靴を作り続けて、手を休める暇もありませんでした。当時、私の店のお客さんの中には、サイゴンで美人と有名だったカム・ニュンさんもいました」。
様々な種類、様々なデザインの樹脂製のサンダルや靴が市場に溢れるようになり、特に若い人は木靴を履かなくなった。そういうわけで、リエンさんの木靴屋も徐々に客が少なくなっていった。