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[特集]

ベンタイン市場最高齢の木製サンダル職人、サイゴンの伝統を継いで

2016/08/07 05:05 JST更新

(C) thanhnien, Nguyen Mi
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 昔も今も、ホーチミン市の人は何か探しものがあると、特別なものから日用品まで何でも揃うベンタイン市場に足を運ぶ。100年の歴史を有し、同市のシンボルとして有名なこの市場に、50年来続く広さ1.5m2ほどの木靴(木製サンダル)屋がある。女主人は70歳をとうに超えている。  同市3区バンコー(Ban Co)通りに住むグエン・ティ・リエンさんは、ベンタイン市場内で店を営んでいる最高齢の木靴職人だ。「木靴作りの仕事を始めて50年以上になります。最初は伯母に習いながら作っていましたが、伯母が亡くなってこの店を継ぎました」。  彼女はこの50年間、朝に店を開けてから夜に市場が閉まるまで、夢中で仕事に打ち込んできた。ここ数年は、年もとり、木靴もそれほど売れなくなったが、毎日変わらず仕事を続けている。以前と1つだけ違うところといえば、かつてのように朝早くから店を開けることはせず、午前10時を少し回ったぐらいにようやく店を開けるようになったことだ。  店に来た客は、まず靴底のデザインを選ぶ。リエンさんは客の足のサイズを測り、客は次にストラップ部分を選ぶ。そして、リエンさんが客の足のサイズに合わせて木靴を組み立てていく。70歳を超えているとはいえ、彼女の作業は素早く正確だ。こうしてでき上がった木靴は、客の足にぴったりと馴染む。  木靴を打つ音の中で彼女はこう語ってくれた。「1970年代から1980年代にかけて、木靴はとても人気だったんですよ。毎日お客さんのために木靴を作り続けて、手を休める暇もありませんでした。当時、私の店のお客さんの中には、サイゴンで美人と有名だったカム・ニュンさんもいました」。  様々な種類、様々なデザインの樹脂製のサンダルや靴が市場に溢れるようになり、特に若い人は木靴を履かなくなった。そういうわけで、リエンさんの木靴屋も徐々に客が少なくなっていった。

 「2000年頃になると、木靴の人気がまた少し上がってきました。特に観光客から好まれて、私の店の客も増えました」。しかし、現在ではその人気もまた落ち込んでしまった。「悲しいことです。誰も買ってくれません」とリエンさんは嘆く。  「今や木靴を履く人はほとんどいないので、1足も売れない日が何日も続くことすらあります。月2000万VND(約9万1000円)ほどで店を貸してくれないかと声をかけてくる人もいます。しかし考えてみると、私もこの仕事に就いて半世紀以上。何とか続けていきたいと思うのです」。  一等地に立ち、賃貸料も市内で最も高いこの市場で、リエンさんは店を守る。木靴1足の価格はわずか10~15万VND(約457~685円)だ。「木靴を作り続ける一番の理由は、サイゴンの古きよきものを少しでも残したいという気持ちからです。人々がまた女性の魅力を象徴する木靴を履くようになって、木靴の音が聞こえるようになれば…」。彼女はそう思いを語る。  もう1つの理由について、リエンさんいわく、「家にいても仕事が恋しくて、居ても立ってもいられなくなるのです。市場に出るのが楽しく、その方が健康にも良いと感じています」とのこと。「ここに座ってはや半世紀。市場は賑やかな場所で、人々が行き交い、たくさんの人生が見える場所です。人生山あり谷ありと同じで、木靴も栄枯衰勢を経てきました」。  リエンさんによると、木靴は古きよきサイゴンの街やベトナム女性と深く結びついているものだという。「最近の人々は、特別なものとして木靴を購入しています。高齢のお客さんが若かりし昔を懐かしんで購入するか、観光客がおみやげとして購入するぐらいで、かつてのように実用品として履かれることはもはやないのです」。 

[Nguyen Mi, Thanh Nien, 09:36 AM - 30/05/2016, A]
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