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週末の朝、ホーチミン市3区の交差点そばにある喫茶店で、日焼けした5人の青年がしゃべりながら通りを眺めていた。すると、バイクのエンジンをふかす異様な音が聞こえ、青年たちは立ち上がった。
通りの向こう側で、若い女性が倒れていた。青年たちの1人は女性に駆け寄り、残りの4人は2台のバイクに飛び乗って、女性の携帯電話を奪った2人組のひったくり犯のバイクを追いかけた。
犯人の乗ったバイクは、群集の間をすり抜けて行く。青年たちは、「ひったくりだ!ひったくりだ!」と叫びながら追いかけた。人の少ないところまで追跡して、バイクで体当りし、ひったくり犯の2人を路上に投げ出した。
犯人の2人はヘルメットを取って殴りかかり、ナイフを突きつけて威嚇したが、4人の青年に取り押さえられた。見ていた多くの人たちが「刑事警察だ」とざわつく中、青年たちは2人のひったくり犯と証拠物件を近くの街区警察に引き渡した。
「ひったくり犯を捕まえる時も私服を着ているので、目撃した人が刑事警察か何かだと思うのも当然でしょうね」。グエン・ベト・シンさんは南部訛りでそう話した。笑顔の爽やかなこの5人の青年たちは、「ホーチミン市騎士団」のメンバーなのだ。
2年前に設立されたこのグループは、5人の主要メンバーと数人のサポートメンバーから構成されている。各メンバーの本業は、運転手、マーケティング、バイクタクシー、ビジネスマンなど様々だ。
「私たちに共通するのは、逮捕にかける情熱だけです。何のためにこんなことをしているのか、何の得があるのかと思う時もしょっちゅうありますが、ひったくり被害に遭って倒れている人を見ると放ってはおけないのです。その時は何も考えずに飛び出すのみです」。シンさんはそう語る。