(C)Dan tri、グエン・タイン・チュン少佐 |
少佐によると、追跡命令を受けた時の手がかりは、氏名と当時の住所だけで他には何もなかったという。海の底で針を手探りで探すような捜査だ。タイ容疑者の実家のある地元警察でさえ事件のことを忘れ、同容疑者が暴力団に殺されたとの噂が流れたこともあった。
チュン少佐は「絶望して迷宮入り事件として処理しようと思ったことが何回もありましたが、『あきらめるな』という声が聞こえました」と語った。そして2013年4月末、メコンデルタ地方ハウザン省ガーバイ町で物乞いをしている男がタイ容疑者に似ているとの情報がもたらされると現場に急行。事件発生から21年後の逮捕となった。
この仕事には専門的な能力や仕事への情熱の他、金、女、麻薬など犯罪者側が提供する甘い誘いを跳ね返すだけの強烈な職業意識も必要だ。脅迫を受けたり、逮捕時に負傷したりすることもある。少なくない同僚達が、より安全で仕事の楽な部署に異動していった。
つらいことが多いのに何故この仕事が好きなのかとの問いに、少佐は「苦労して探し出した容疑者を逮捕できた瞬間の喜びは、言葉で表現できないほどです。地域の人々の安全な暮らしを助けることに貢献できますし。それに容疑者を逮捕すると多額の賞与が出るんですよ」と笑って答えた。