(C) VIETJO/A-TIM’s 写真の拡大. |
- 舞台挨拶にドクさんと川畑監督が登壇
- 「現在の姿をありのままに見てほしい」
- 「平和のありがたさを伝えたい」
ベトナム戦争時に米軍が散布した枯葉剤の影響で結合双生児として生まれた「ベトちゃんドクちゃん」の「ドクちゃん」ことグエン・ドクさん(43歳)の、今も後遺症と戦う宿命、そして平和のメッセンジャーという使命とともに逞しく生きる姿を捉えたドキュメンタリー映画「ドクちゃん−フジとサクラにつなぐ愛−」の特別試写会が11日、東京・日本赤十字看護大学広尾ホールで行われた。
© VIETJO/A-TIM’s
ドクさんは2024年2月25日で43歳を迎え、現在は夫として、父として、結婚18年目を迎える妻のトゥエンさんと、双子の子供であるフー・シー(フジ)くんとアイン・ダオ(サクラ)さんとともに、闘病中の義母を自宅介護しつつ、自身も入退院を繰り返しながら一家の唯一の稼ぎ手として暮らしている。
これに先立つ8日、同映画はホーチミン市で開催された「ホーチミン市国際映画祭(HIFF)」で初めて上映され、ベトナム国内でも大きな反響を巻き起こした。
11日の特別試写会が日本初上映となり、当日は訪日したドクさん、そして同映画の監督を務めた川畑耕平氏が登壇し、プロデューサーのリントン貴絵ルース氏の進行のもと、舞台挨拶が行われた。
© VIETJO/A-TIM’s
会場となった広尾ホールは、兄のベトさんとドクさんが1986年に約4か月間の入院生活を送った日本赤十字社医療センターにある。当時、急性脳症によりベトさんの容体が悪化し、2人は身体がつながったまま、ベトナムから救急搬送されたのだった。さらに、日赤は1988年にベトナムで行われた2人の分離手術も支援したことから、ドクさんにとっても縁の深い会場での記念すべき日本初上映が実現した。
ドクさんは今回が53回目の訪日で、日本を「第2のふるさと」と呼んでいるが、日赤を訪れたのは1986年の入院以来、これが2回目だという。
ドクさんは舞台挨拶の冒頭、「皆さん、ありがとうございます」と流ちょうな日本語で挨拶した。映画では、今までの経験、そして今現在の姿をありのままに見せているドクさん。この映画を通じて伝えたいことについて問われたドクさんは、「2つあります。1つ目は現在の私、グエン・ドクの真実の姿を、ありのままに見ていただきたいです。2つ目は平和のありがたさ、戦争を再び起こすまいという気持ちを伝えたいです」と答えた。
さらに、「私のことは日本でもたくさん報道されたり、本などで伝えられてきましたが、『ちょっとどうなんだろう』と思うような部分もあったので、今回の映画を通じて、私、ドクという人間について、正しく見ていただきたいなと思います」と付け加えた。
© VIETJO/A-TIM’s
いよいよ日本での初お披露目となった今の気持ちについて川畑監督は、「日本とベトナムの文化の違いや言葉の問題などもありましたが、色々な方々の支えがあってここまでくることができました」と感謝を述べた。
現在、ドクさん自身もホーチミン市ツーズー病院に職員として勤務し、実際に医療の現場を体験している。ドクさんにとっての看護や医療について問われると、「患者というのはそれぞれが困難を抱えて病院に来るので、その方たちをいかに大切に扱えるか、そして少しでも希望を持ってもらい、明るい気持ちになってもらえるかが、医療の現場の人間にとって大切だと思います」と話した。
一方、現在も深刻な健康問題と闘っているドクさん。そんなドクさんが健康と向き合う姿勢について川畑監督は、「2022年12月に最初にインタビューしたときに、(ドクさんが)『僕はどのぐらい生きられるかわからない』と言っていたんです。食べるものにも気を遣い、運動もしていて、すごく健康に気を遣っているんですが、取材を通じて思ったのは、『生きたい』ということ以上に、双子の子供たちととにかく長く一緒にいたい、という気持ちが根底にあるのかなと感じました」と語った。
舞台挨拶の最後には、会場に集まった日本赤十字看護大学の学生に向けて、ドクさんと川畑監督から応援のメッセージが贈られた。
© VIETJO/A-TIM’s
映画「ドクちゃん−フジとサクラにつなぐ愛−」は、2023年の日越外交関係樹立50周年と、分離手術から35周年を記念するドキュメンタリー作品となっており、ドクさんの等身大の姿をありのままに映している。日本では5月3日(金)に新宿ピカデリーほかでの公開が決定している。
<公開劇場情報>
◇2024年5月3日(金・祝)公開
東京(新宿):新宿ピカデリー
愛知(名古屋):ミッドランドスクエアシネマ
大阪(大阪):なんばパークスシネマ
栃木(宇都宮):宇都宮ヒカリ座
◇2024年5月18日(土)公開
兵庫(神戸):元町映画館
◇順次公開
京都(京都):京都シネマ
福岡(福岡):KBCシネマ
長野(長野):長野千石劇場
静岡(浜松):CINEMA e_RA
沖縄(那覇):桜坂劇場
ほか
映画の詳細は、公式ウェブサイト、エックス(X)、インスタグラム(Instagram)を参照。
(※本記事はVIETJOベトナムニュースとベトナムエンタメ情報サイト「A-TIM’s(エータイムズ)」の合同取材によるものです。)