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東南部地方ビンズオン省トゥアンアン市に住む男性フン・フウ・ヒエップさんは、地域の人々から「釘拾いの騎士」と呼ばれ、親しまれている。
朝4時30分、ヒエップさんは、磁石を仕込んだ箱を後部に取り付けたバイクで出かける。バイク車線を走ること20km、帰ってくる頃には、その手製の箱に1kgほどの釘や金属片が吸い付けられている。道路に落ちていたものだ。
「ほとんど毎朝やってくれている。釘を踏んでパンクして、転んで大けがする人も珍しくないので、彼のしていることは本当に意味のあることだよ。このあたりの人は彼のことを『ナイト』って呼んでいるよ」と近隣に住む男性は話す。
ヒエップさんはトラック運転手をしているのだが、仕事中に、パンクによる痛ましいバイク事故を何件も目撃した。そして3年ほど前、市内の道路をバイクで走っていた時に、彼自身も釘を踏んだ。「急用で職場に行く必要があったのですが、パンクしてしまったので、汗だくになってバイクを押して修理店を探しました。それから1か月後、また同じ目に。その時から、釘の回収車を作れないか考え始めたんです。他の人が事故に遭ったり、修理店を探してバイクを押して回るようにさせたくなかったので」とヒエップさん。
そうしてヒエップさんは、暇な時間を利用して、回収箱を取り付けたバイクを5台ほど作った。改良を重ねどんな大きさのどんな金属でも回収できるようにした。そんな彼のもとには、同じような活動がしたいと志願する若者も訪れるようになったため、回収車をさらに作って「釘回収隊」を結成することにした。
釘を回収するために道路を走るのは、人々が仕事に出かける前の早朝が最も良いという。ただ彼は午後も、ラッシュアワーの前などに走って、釘の回収をしている。自分の仕事だけでも忙しいのに、なぜこんな活動を?と尋ねる人もいる。なぜ自分がこんな活動をしているのか、彼自身よくわからないという。
「単純に、パンクして困っている人がいたら、助けたいというだけですよ。飲みに行くお金を少し、回収車を作る材料購入に回しているだけです。人を助けることは、自分を助けることでもあるので」とヒエップさんは話した。