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ハノイ市旧市街の細い道々をゆっくりと走るシクロが、交通に影響を与える様々な問題の種となっている。
旧市街を歩くと、客待ちをするシクロの集団をよく目にする。シクロ運転手の大半は地方出身の、この仕事を長年している高齢者だ。だがそんな伝統のシクロは近年、ほとんど使う人のいない「忘れられた」乗り物と化している。
長年この仕事をしてきたカーさん(男性・63歳)は、大きな変化を目の当たりにしている。「この仕事をして30年あまり経つが、2000年代と比べて、お客さんの数は10分の1。1日に数万VND(1万VND=約60円)しか稼げない日もある。昔は多くの道を走れたが、いまは観光地のホアンキエム区しか走れない」。
ハノイ市内では現在、旅行会社の管理するものとして260台あまりのシクロの活動が許可されている。乗客は主に外国人観光客であるものの、観光客でさえ、速度の遅いシクロは敬遠しがちだ。
コロナ禍を経て、観光客は安定的に戻り始めているものの、シクロ運転手が暇を持て余す状況には変化なく、客を求めてシクロ運転手は旧市街を駆けまわる。敬遠されているシクロではあるが、ホアンキエム区に限って見ると台数はかなり多く、この状況が、街の交通の頭痛の種になっている。
ホアンキエム湖沿いのディンティエンホアン(Dinh Tien Hoang)通りでは、多くのシクロが路上で客待ちしており、ハンバック(Hang Bac)通り、ハンマー(Hang Ma)通り、ハンチェウ(Hang Chieu)通りなどでも同様だ。
シクロは遅く、数珠つなぎで走るため交差点では渋滞が生じ、他の車両に道を譲ろうともしない。「小さな通りに外国人観光客を乗せた十数台のシクロが並んで走ったら、渋滞しないほうがおかしい。個人的にはシクロを維持すべきだと思うが、週末など往来が少ない日に限った方がよいと思う」と旧市街に住む女性は話す。
シクロが交通に及ぼす影響を解決するため、2019年にハノイ市はシクロに対するナンバープレート発行の中止を決定し、シクロの活動も禁止することを検討していたが、現在もなお禁止には至っていない。