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レ・キー・ハンさん(1991年生まれ)は、東南部地方ドンナイ省で3人兄弟の次男として生まれた。5歳頃からハンさんは自分が他の友達とは違うことに気づいていた。人形遊びが好きだったし、母親の服を着るのが好きだったし、何しろ遊ぶのは、女の子とばかりだった。
しかしながら特に父親が厳しい家庭だったため、いつも自分を隠し、男の子として生きてきた。
学校では、性のことでからかわれることも多かった。腹立たしかったし、苦しかったが、ハンさんは争いではなく、学業に集中した。そうして良い成績を収めるようになると、先生や友人から慕われるようになった。
学業に邁進したハンさんはホーチミン市のRMIT大学に進学。卒業すると、英語を教えながら化粧品の販売をし、メイクアップアーティストの仕事を掛け持ちした。収入は、自分と家族を養うのに十分だった。
ちょうどその頃ハンさんは、女性ホルモンや性転換について調べ始め、本当の女性になりたいと強く願うようになっていった。
2017年に家族にカミングアウト。理解はしてもらえなかった。それどころか両親は、我が子の頭がおかしくなってしまったのではないかと思うほどだった。両親の激しい反対にハンさんは家を出るしかなかったが、両親への怒りはなかった。自分のことを心配してくれているだけで、LGBTについてよく理解していないだけ、ということはよくわかっていたからだ。
3つの仕事を掛け持ちして貯めたお金で、ハンさんは性転換手術を受けることを決めた。顔の手術はベトナムで、体と声帯の手術は、タイで受けた。
2年をかけて手術を受けること10回。小さな手術から、大きな手術まで。3回の鼻の手術に、2回の目の手術、顎を削り、上半身、下半身、声帯……。ベトナムでの手術は1人で挑み、タイでは性転換した女性のサポートを受けた。
こうしてハンさんは、女性らしい、美しい、魅力的な外見を手に入れた。女性として実家に帰った時には、両親はとてもショックを受けたが、時とともに両親も、自分の娘が成し遂げたことを誇りに思うようになった。両親が自分の本当の姿を受け入れてくれたことが、ハンさんにとってのいちばんのプレゼントだった。