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南中部沿岸地方クアンナム省ボーチャック郡トゥオンチャック村に住む少数民族マクーン(Ma Coong)族は毎年旧暦1月16日の夜、今年の豊作と人々の健康を祈る太鼓叩きの祭礼を開催している。この祭りの特徴は、この日だけ「浮気」が公然と認められることだ。
村人らは祭礼に備えて、古い木の下に茅葺の小屋を作る。小屋の中には祭壇を設けて、酒、魚、鶏、糯米などをお供えし、太鼓が吊るされる。太鼓にはヤギの皮が張られている。祭礼は神への拝礼の儀式で始まる。
儀式が終わると、村の長老が祭りの開始を宣言する。選ばれた頑健な若者らが争うように太鼓を打ち鳴らし、その周りでは村民らが手を取り合って踊る。彼らは太鼓の皮が少しでも早く破けることを望んでいる。それが「逢い引き」の始まりの合図になるからだ。皮が破けると、男女がいそいそと森の中へ消えてゆく。
マクーン族の間では、この夜だけは太鼓の皮が破けた時から翌日の朝に鶏が鳴くまでの間、神様が未婚・既婚にかかわらず好きな相手と過ごすことを許すと信じられている。神のご加護か、普段の生活で嫉妬や浮気が問題になったことはないという。