(C)Zing、コンフン島に今も残るココナッツ教の聖地 写真の拡大 |
ズア教は当初、人の修身を助けるという宗教的要素があって多くの人が従ったが、ナム氏が奇妙な修行方法を編み出していくに連れて、弟子の数が減っていった。ホアン氏はコンフン島を去り、メコンデルタ地方アンザン省チャウドックのカム山で修行を続けることにした。
カム山の頂上に生えていたガジュマルの木を選び、地上約20メートルの位置に八角形の台座を作り、その上で暮らした。初めは野菜や果物を食べていたが、徐々に食を減らし水を多く飲むようになった。修行は9年間続き、最後の7か月は、サトウキビと果物のジュースしか飲まなかった。シャワーも一度も浴びなかった。必要な場合だけ地上に降りたが、人と一切言葉を交わさなかった。
多くの人が見学に来て、「彼は孫悟空だ」、「いや聖人だ」と噂が広まったが、やがて人々の関心も薄れていった。ホアン氏が山を降りるきっかけになったのは、ある日、木の上を見上げた人が、ホアン氏がまったく動かないのを発見し救出したことだった。当時40歳過ぎだったが、全身ガリガリにやせて目は落ち窪み、肌は黒ずんで老人のようだったという。
ホアン氏はこの後、ティエンザン省の故郷の村に帰って年老いた両親と暮らした。今は60歳を超えて1人で暮らし、豆腐を作って各寺に販売して生計を立てている。過去を振り返ってホアン氏は「修行は解脱を目指してというよりも、訳も分からずに肉体をいじめ抜いたという方が当たっている」と語った。