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[社会]

「ココナッツ教」最後の修行者、グエン・タイ・ホアン氏

2014/01/30 08:02 JST更新

(C)Zing、コンフン島に今も残るココナッツ教の聖地
(C)Zing、コンフン島に今も残るココナッツ教の聖地
 ベトナムに「ズア(ココナッツ)教」が誕生してから40~50年になるが、宗教として生活に根付いているとは言い難い。他の宗教のように教義があるわけでもなく、指導者もいないことが原因のようだ。  ズア教の創始者は、1910年にメコンデルタ地方ベンチェ省で生まれたグエン・タイン・ナム氏で、1990年に他界している。ナム氏は事業に失敗し、全てを捨てて修行生活に入ったとされる。修行の方法は、ココナッツ(ベトナム語で「ズア」と発音)ジュースを飲み菜食に徹するというもので、この特徴から「ズア教」と呼ばれるようになった。  ナム氏は弟子にココナッツの木を切らせ、その上に八角形の板を置いてその上で暮らした。メコンデルタ地方ティエンザン省を流れるティエン川の中洲コンフン島に移ってからも、地上20メートルの木の上で暮らした。その跡は今も残っていて観光名所になっている。  ベトナム戦争中の1968年にはコンフン島が兵役忌避者の避難場所になったが、南ベトナム政府は何もできなかった。この噂を聞きつけて、グエン・タイ・ホアン氏もナム氏に弟子入りした。この時からホアン氏の修行生活が始まった。

 ズア教は当初、人の修身を助けるという宗教的要素があって多くの人が従ったが、ナム氏が奇妙な修行方法を編み出していくに連れて、弟子の数が減っていった。ホアン氏はコンフン島を去り、メコンデルタ地方アンザン省チャウドックのカム山で修行を続けることにした。  カム山の頂上に生えていたガジュマルの木を選び、地上約20メートルの位置に八角形の台座を作り、その上で暮らした。初めは野菜や果物を食べていたが、徐々に食を減らし水を多く飲むようになった。修行は9年間続き、最後の7か月は、サトウキビと果物のジュースしか飲まなかった。シャワーも一度も浴びなかった。必要な場合だけ地上に降りたが、人と一切言葉を交わさなかった。  多くの人が見学に来て、「彼は孫悟空だ」、「いや聖人だ」と噂が広まったが、やがて人々の関心も薄れていった。ホアン氏が山を降りるきっかけになったのは、ある日、木の上を見上げた人が、ホアン氏がまったく動かないのを発見し救出したことだった。当時40歳過ぎだったが、全身ガリガリにやせて目は落ち窪み、肌は黒ずんで老人のようだったという。  ホアン氏はこの後、ティエンザン省の故郷の村に帰って年老いた両親と暮らした。今は60歳を超えて1人で暮らし、豆腐を作って各寺に販売して生計を立てている。過去を振り返ってホアン氏は「修行は解脱を目指してというよりも、訳も分からずに肉体をいじめ抜いたという方が当たっている」と語った。 

[Zing,22:02 01/01/2014,O]
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