ベトナムではCovid-19の影響で、食料品などの生活必需品の確保が注目を集めていますが、食料品小売の中でここ数年注目を集めているのが Bach Hoa Xanh です。まだ開業から6年に満たない食料チェーン店舗なのですが、ベトナム人の生鮮食品確保の場として大きくビジネスを伸ばしています。今回はこのBach Hoa Xanhの成功の背景について解説したいと思います。
Bach Hoa Xanhは、携帯チェーンのThe gioi di dong や、家電チェーンの Dien May Xanh などを手がけるMobile World Investment Corporation が2015年からスタートさせた小型サイズのスーパーです。毎年順調に店舗を拡張させ、2021年7月段階では既に店舗数は1900店舗を超えるまでに成長しています。ベトナムのコンビニエンスストアの店舗数がベトナム全土で1000店舗に満たず、その店舗数がここ数年ほぼ横ばいであることを考えてもその成長の速さは一際目を引きます。
現在、Bach Hoa Xanhの店舗は南部に集中しています。ベトナムで現在最も多くの店舗を展開しているミニスーパーは Vinmart+ で2000店舗強の店舗数なのですが、南部だけで2000店舗弱の店舗を展開しているBach Hoa Xanは地域を南部だけに限ると最も店舗数の多い食品スーパーを言うことができます。ちょっとした南部の地方都市にいってもBach Hoa Xanhは大通りに店舗を展開しています。
それではBach Hoa Xanhの強さの秘訣はどの様な点にあるのでしょうか?
一つは店舗出店能力です。Bach Hoa Xanhを展開するMobile World Investment Corporationはベトナム随一の携帯電話チェーンや家電チェーンを展開しており、出店に関する経験が豊富で他社よりも効率的に出店展開を行うだけの知識・リソースを備えています。また、出店に関してはベトナムの主婦層が生鮮食品を日常的に購入するウェットマーケット近隣に積極的に出店することでユーザの獲得を目指す姿勢が明確です。
また、そのスピードも特筆すべき点として挙げられます。例えば大型店舗を実験的に展開してみたり、家電ショップの一部をスーパーに置き換えたりと、変化のスピードが非常に早く、実験的に小規模にサービスを展開しうまくいく様であればすかさず横展開するというオペレーションの流れが非常に明確です。このスピードもThe gioi di dongやDien May Xanhなどの経営から培われたものと考えられます。
最後に、デジタルへの適応の高さについても彼らの強みの一つとして挙げられます。Bach Hoa Xanhのウェブサイトは月間で400万アクセス以上を誇る国内Top 10のECサイトとなっています。食品のEC化は例えばITや化粧品などと比較すると遅れている分野なのですが、そんな中Bach Hoa Xanhは早くからデジタルに力を入れており、ソーシャルディスタンス下にある現在、デジタルの売上は前年比4倍と著しい成長を見せています。
こういった様々な活動によって、Bach Hoa Xanhの一店舗当たりの売上や収益性は他ミニスーパーと比較しても非常に高いものとなっています。例えば同じ様に大量出店を続けるVinmart+と比較しても店舗当たりの売上の高さは顕著で、また店舗数を増やしながらも高い店舗あたりの売上を確保しています。直近の2021年7月においては、ソーシャルディスタンスの影響により一店舗当たりの売上は最高額を記録しています。
今後のBach Hoa Xanhですが、順調に店舗展開を進めるとともに中期的には現在店舗展開がなされていない北部への進出などを進めていくと予想されます。また、彼らが得意とするデジタルを利用したサービスを展開を強化していくのではないでしょうか。現在はまだ、一般小売店舗やウェットマーケットでの生鮮食品の購入が一般的ですが、Bach Hoa Xanhのような事業者がベトナム人の買い物習慣に変化を与えていくのではないでしょうか。