幼稚園での生活は子どもが中心でなければなりません。 自分たちで物事を進めていけるという達成感や充実感は、普段の遊びを通して培って行くもの だと考えています。また成長していく子どもの日々の様子にそばにいる保育者が気づきや学びを持って存在していることが、その子どもの成長を助けることにつながっています。今回は1学期の終わりに年長児の担任が見つけた遊びの記録から考えてみたいと思います。
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<5歳児年長クラス・担任Yの記録より抜粋>
ある日、年長児Aくんが画用紙に自分のマンションや住んでいる周辺の地図を描いていました。それを見ていたBくん、Cくん。すると、3人で一つの画用紙に絵を描き始めました。画用紙の、裏面にまで絵を描きたい様子だったので、保育者が「もっと大きい紙があるよ」と声をかけ、翌日の活動へと繋げました。
翌日、「せんせい、おおきいかみがほしい」と登園後すぐにAくんがやって来ました。やる気満々な様子が伝わります。保育者も張り切って、まっさらな大きな模造紙を準備しました。子どもと保育者のやる気が重なります。昨日同様にAくん、Bくん、Cくんが絵を描き始めるとDくん、Eくんも加わり、仲間が増えていきました。Aくんは、雲、虹、太陽から描き始めました。そこに仲間が色を加えたり、雲を付け足したりします。そうしているうちに、クラス中の男児ほとんどが加わっていました。気づくと、それぞれに絵を描きながら、自分の絵の説明をし始めて話が繋がって行くのです。空には飛行機が飛び、海にはクジラが泳ぎ、自分達が暮らすマンションの周辺には様々なお店や電車、駅があるのです。また、街を隔てリンゴやオレンジの木が沢山ある森のようなものもあります。Gくんはオレンジの木を描いた後、その隣にオレンジの実を描き、黒く塗りました。
Gくん:「せんせい、これなんだとおもう?」
保育者:「うーん、何かな…。オレンジのへそかな?」
Gくん:「ちがうよ、おれんじのみが、きからおちてくさっているんだよ」
子ども達のイメージは保育者が思っているよりもはるかに豊かでした。子ども達の協力はさらに広がります。夢中になり絵を描いていたFくんの使っているペンのつきが悪くなりました。その隣にいたAくんは「まってて、こっちはつくよ」と同じ色のペンをFくんに差し出します。
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子どもたちは夢中になって遊びだすと、思った以上の力や面白さを大人に教えてくれます 。一見、みんなで絵を描くことだけに保育者は、集中しがちですが、今回担任は子どもたちの会話からいろいろなことに気づかされていきました。一人のイメージが、みんなに広がって行く面白さ。ストーリーの中に出てくるものや、話の流れが、つい最近の保育中話していたことの再現でもあったこと。使う道具の貸し借りまで配慮ができるところも見せてくれました。保育者が教師然として出しゃばる必要はどこにもありません。子どもが作っていく生活とはこういう遊びの中のやり取りから始まっていきます。