ベトナムニュース総合情報サイトVIETJO [ベトジョー]
 ようこそ ゲスト様 

【第2回】空手世界チャンピオン、ベトナム代表デビュー戦

2019/12/02 10:40 JST配信

こんにちは。

3月に大学を卒業し、4月よりホーチミンで家具メーカーの営業職をしている小野寺天汰(おのでら てんた)です。 空手の世界チャンピオン が打倒ニッポンを掲げ、ベトナムを強豪国にするべく、これから様々なチャレンジをします。

先日9月8日、私はマレーシアで開催された「第1回アジアフルコンタクト空手道選手権大会」にベトナム代表として出場をしてきました。結果は準優勝で、 「第1回全世界フルコンタクト空手道選手権大会」へのアジア枠出場権を獲得し、ベトナム代表として来年日本で闘うことが決定 しました。今回はベトナム代表として初めて試合に出場するにあたり、大変だったことや気づいたこと、今後の課題などを綴ります。

と、その前に大会の概要と出場の経緯について説明したいと思います。現在、「空手」の大会では大きく分けて2つのルールがあります。

ひとつは「伝統派空手」「寸止め空手」といわれるもの。もう一つは「フルコンタクト空手」「極真空手」といわれるものです。どちらにもそれぞれ魅力があり、国内外で多くの人に親しまれています。2020年の東京五輪での採用を目指し、結束力を固め、それぞれが採用に向けた活動を行いましたが、結果的に 「伝統派空手」のみがオリンピック競技として採用 されることとなりました。

「フルコンタクト空手」は東京五輪採用には至らなかったものの、採用を目指す過程において結束力が強まり、初の統一組織である「 JFKO (全日本フルコンタクト空手道連盟)」が発足し、多くの団体が加盟しております。2014年よりJFKO主催の全日本大会が開催されており、 2020年には「第1回全世界フルコンタクト空手道選手権大会」が開催 されることになりました。世界各地で予選が開かれる運びとなり、今年5月に開催された全日本大会で日本代表はすでに確定しております。

4月よりベトナムに住んでいる私にとって、5月の全日本大会に出場するという考えはありませんでした。そんな中、「第1回アジアフルコンタクト空手道選手権大会」がアジア枠代表決定戦を兼ねて開催されるとの情報を得て、ベトナムに来て練習場所もなにもかも決まっていませんでしたが、出場することを決めました。

「アジア大会」という名前ですが、予選を勝ち抜いたわけではありません。ベトナムでの住所と「ベトナムから出場する」という旨を書いた申込書と出場費を提出し、エントリーが完了しました。

大会にはマレーシアやオーストラリア、そして日本や強豪国のカザフスタンからも参加があり約30か国、総勢160名以上の選手によって、体重別男女4階級で開催されました。

アジア大会開会式の様子

ベトナムからの出場者は男子中量級(−75kg級)での出場の私と、新極真会ハノイ支部 からベトナム人選手が男子軽量級(−65kg級)と軽重量級(−85kg級)での出場で計3名です。

ベトナムから参加の3選手

(惜しくも予選で敗れてしまいましたが応援させていただきました。また最後まで応援もしていただきました)

私の出場した男子中量級には37名がエントリー。1回戦はパキスタン人の選手と戦いましたが、それ以降、2回戦、準々決勝、準決勝の対戦相手はミャンマー、台湾、タイで働く、各国からの日本人の方々。そして、決勝戦は日本から派遣されてきた選手との対戦ということで、日本人選手との対戦が続く結果となりました。

男子中量級(ー75kg級)入賞者集合写真

さて、こういった内容での準優勝という結果について、感想を述べたいと思います。まず、率直な気持ちとしてホッとしました。大会出場にあたって、練習環境を整えるところから始まりましたが、 ベトナムにおいて「フルコンタクト空手」の競技者は非常に少ない です。テコンドーや先に述べた「伝統派空手」の道場はたくさんありますが、「フルコンタクト空手」の道場はベトナム国内に10か所もありません。

幸いベトナムでは現在ジムが急増しており、その中でムエタイなどの格闘技のクラスを設けているジムがあります。そんなジムにはサンドバッグなどが設置されているため、「格闘技クラスのあるジム」を中心に探し、入会を決めました。

仕事が終わった後にジムに向かい、 ムエタイクラスが行われている横で黙々と一人で空手の突きや蹴りを練習する日々を行っていました が、自分が強くなっているのか弱くなっているのか、そもそも何のためにやってるんだろう、頑張る意味あるのか、と思い悩みながらコツコツと練習を続けてきました。

空手の試合は対戦相手がいて初めて成り立ちます。一人での練習ばかりで、人と練習をしていないので、

「すごく痛いんじゃないか?」

「攻撃が見えないんじゃないか?」

「自分の攻撃が当たらないんじゃないか?」

と感覚的な面が曖昧で、自分のコンディションが全くわかりませんでした。こんな状態で試合に出たのは4歳から空手を続けてきた中で初めてで、緊張と不安でいっぱいでした。

そんな思いを抱えながら迎えた大会でしたので、 「世界大会出場権を得る」という今回の目標が準決勝を突破した時点で達成されて一安心しました 。もし、1回戦で負けたりしていたら、しばらく立ち直れなかったかもしれません。

黙々と隣で一人で練習を続けたムエタイクラスのみんなと大会終了後記念撮影

今回のアジア大会を振り返ってみると、男女8階級中、7階級を日本からの派遣選手が優勝、1階級をカザフスタンの選手が優勝という結果になりました。何名か入賞に食い込んだ選手やアクロバティックな技で会場を沸かせた選手もいましたが、全体的に 日本やカザフスタンの選手と東南アジア諸国の選手との差ははっきり言って大きく 、危険な対戦もありました。ただし、それは彼らが身体的に劣っている、才能がないという意味では決してなく、 普及度合いや競技人口の多さ、環境によるもの であります。

ベトナムにおけるサッカーやタイのムエタイ、ミャンマーのラウェイなど、国民が愛する人気のスポーツがあります。一丸となって盛り上がる「熱」は日本以上にあると感じていますので、 その潜在的な「熱」を空手に引き寄せられることができれば少しずつレベルが上がっていくのでは? と思っています。認知度が広がった上で、東南アジア各国の代表による団体戦なども行えば、熱狂的なイベントが出来る可能性もあります。

また、先日初の日本開催で大盛況を見せたラグビーワールドカップでは、日本代表が次々と強豪国を破り、ベスト8に入りました。日本代表の躍進の中で主将のリーチマイケル選手を始め、外国人選手の存在は非常に大きかったです。母国を離れ、異国の地で自らの強みを活かし、その国の方々に技術を伝え、共に高みを目指し、感動と歴史を作る。グローバル化が進む現代において、非言語である「スポーツ」の可能性というのはますます大きくなるのでは?と強く感じています。

私は 国籍は日本ですが、ベトナム代表として来年世界大会で戦うからには恥のないような姿を見せる必要があると思いますし、少しでも多くのベトナムの方に関心を持っていただき、愛される選手になりたい と思ってます。

孤独との戦いの中でひとつ結果が出たのは非常に嬉しく思いますが、来年の世界大会はこのままでは勝てないと感じています。1人では難しい部分がありますし、自己満足で終わらず、コミュニティを作り、競技人口をどんどん増やしていくことが自分のためであり、「ベトナムを強豪国にする」という目標達成に近づくことが出来ると思っています。

また、今回自分が1人でも練習を続けることが出来たのは「大会で勝つ」という目標かあったからです。日本では毎週大会が開催されていますが、ベトナム含め東南アジアではなかなか大会がありません。大会が全てではありませんが、 明確な目標設定がしやすいので、小さくても良いから大会の開催も目指さなければいけない と強く感じました。

ということで、

・来年の世界大会で優勝をする

・競技人口を増やす

・指導者を育成する

・定期的に大会を開催する

これらを達成するために活動をしていきたいと思っております。

コツコツと活動を続け、ベトナムのみならず周辺の東南アジア諸国の「フルコンタクト空手」の活性化の一端を担うことができれば嬉しく思います。

著者紹介
小野寺 天汰(おのでら てんた)
1996年4月6日生。兵庫県伊丹市出身。関西学院大学商学部卒業。4歳より空手を始め、19歳の時に世界大会で初優勝。21歳でテコンドーのインカレで優勝。22歳でインド・スリランカで単身・空手セミナーを成功。アジアの活気とポテンシャルに魅力を感じ、2019年4月、新卒1年目でホーチミンで家具メーカーの会社員に。ベトナムを空手における「アジアの中心地」へと変えるのが目標です。「打倒ニッポンの空手」でベトナム人とともに最強を目指します。趣味は語学学習とTシャツデザイン。好きな食べ物はステーキとインドカレー。

◆各SNSからなんでもお気軽にご連絡ください

Twitter(https://twitter.com/dera10ta

Facebook(https://www.facebook.com/tenta.onodera

Instagram(https://www.instagram.com/tenstaderam46/
打倒ニッポンの空手~ベトナムは最強を目指す~
その他の記事はこちら>
© Viet-jo.com 2002-2024 All Rights Reserved. 
※VIETJOベトナムニュースは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。 免責事項
新着ニュース一覧
「小さな手」でペンを持ち文字を書く、両手のない女子高生 (10:10)

 南部メコンデルタ地方カマウ省にあるウーミン高校3年生のドー・グエン・ゴック・マイさん(女性)は、生まれつき両手を欠損している。しかし、自らの「小さな手」でペンを持ち、美しく文字を書く動画をソーシャル...

駐在員の世界生活環境ランキング、ホーチミン163位・ハノイ168位 (21日)

 米国の組織・人事コンサルティング会社マーサー(Mercer)が発表した「2024年世界生活環境調査(Quality of Living Survey)」の「生活の質の高い都市ランキング」によると、ベトナムの2大都市は、対象となった世界...

ハノイ~ホーチミン線の提供座席数、3年連続で世界4位 (21日)

 世界の航空関連情報を提供する英国のオフィシャル・エアライン・ガイド(Official Airline Guide=OAG)が発表した世界の人気路線ランキング「Busiest Route」2024年版によると、世界の国内線ランキングでハノイ...

年末年始の日本人旅行者に人気の海外旅行先、ベトナムが4位 (21日)

 世界最大級の宿泊予約サイト「ブッキング・ドットコム(Booking.com)」はこのほど、2024~2025年の年末年始における日本の旅行者の動向を探るべく、2024年12月31日(大晦日)チェックインで検索された宿泊施設のデ...

ホーチミン:メトロ1号線、開通初日12月22日は午前10時から運行 (20日)

 ホーチミン市都市鉄道(メトロ)管理委員会(MAUR)は、12月22日に商業運転を開始する同市都市鉄道(メトロ)1号線(ベンタイン~スオイティエン間)について、運行開始時間が午前10時になると発表した。  メトロ1...

ビナフォン、20日から5Gサービスの商業運用を開始 (20日)

 ベトナム郵便通信グループ(Vietnam Posts and Telecommunications Group=VNPT)傘下のビナフォン(Vinaphone)は20日、第5世代移動通信システム(5G)サービスの提供を正式に開始した。  ビナフォンは正式提供...

週の平均労働時間が長い国、ベトナムは45.3時間で世界20位 (20日)

 国際労働機関(ILO)の統計によると、世界の労働者の1週間当たりの平均労働時間は43.9時間となっているが、この労働時間は、文化水準や経済構造、労働政策の違いにより、各国の間で大きな差があるという。  I...

フランスの海運大手CMA CGM、ベトナムで電動バージ運航へ (20日)

 フランスの海運大手CMA CGMはこのほど、東南部地方ビンズオン省と同バリア・ブンタウ省のジェマリンク(Gemalink)深水港を結ぶ海運航路に電気運搬バージを導入すると発表した。2026年の運航開始を予定している。...

三菱マテ、独タングステンメーカーの全株式取得完了 マサン系から (20日)

 三菱マテリアルグループは、2025年3月末までに完了する予定としていた、タングステン事業を手掛けるドイツのH.C.Starck Holding (Germany) GmbHの全株式の取得について、17日に手続きを完了した。  同社は...

決済アプリ大手「MoMo」、電子身分証明アプリで公安省と提携 (20日)

 公安省傘下の国民身分証明・人口データ研究応用センター(RAR)は、ベトナムのテクノロジーユニコーン企業の1社である決済アプリ大手「モモ(MoMo)」との間で、公安省が展開する電子身分証明アプリ「VNeID」の一連...

少年同士の喧嘩で相手を死亡させた16歳被告に4年9か月の禁固刑 (20日)

 ハノイ市ロンビエン区人民裁判所は17日、傷害罪に問われていたチュオン・バン・ミン被告(男・16歳)の一審判決を下して、4年9か月の禁固刑を言い渡した。  裁判所は、この事件はスポーツ中の些細なトラブル...

ベトジェットエア、グルーブ予約で運賃10%割引 (20日)

 格安航空会社(LCC)最大手ベトジェットエア[VJC](Vietjet Air)は、12月30日(月)まで、3~5人のグルーブ予約を対象に、ベトナム国内線と国際線の航空券のエコクラス運賃が10%割引(税

ベトナム・ラオス国防相会談、軍法・国防協力で覚書 (20日)

 ファン・バン・ザン国防相は18日、ベトナムを公式訪問中のラオスのカムリエン・ウタカイソーン国防相と会談した。  両国防相は会談で、両国間の国防協力が近年大きな成果をあげ、両国関係の重要な柱の1つと...

23年の世界ビール消費量、ベトナムは世界7位 前年比▲13.8%減 (20日)

 キリンホールディングス株式会社(東京都中野区)は、2023年における世界主要国のビール消費量に関するレポートを発表した。ベトナムは前年比▲13.8%減の455万klで、前年と同じく7位だった。  2023年の世界の...

ベトテル参画の光海底ケーブル「ADC」が正式運用開始 (20日)

 日本とベトナムなどのアジアを接続する大容量光海底ケーブル「アジア・ダイレクト・ケーブル(Asia Direct Cable=ADC)」は、試運転を経て19日に正式に運用を開始した。  ADCは、◇日本、◇中国、◇香港、◇フィ...

©VIETJO ベトナムニュース 2002-2024 All Rights Reserved