皆さん、初めまして。廣済堂HRベトナム の堀岡(ほりおか)と申します。当社はベトナムに会社を設立して5年余りで、日系企業様に人材紹介や教育研修などを提供しています。
仕事柄、様々なジャンルの日本人やベトナム人と会う機会に恵まれており、それぞれの悩みに日々接しています。例えば日本人の悩みは、これだけ親日と言われる国に滞在しながら、「ベトナム人は真面目と聞いていたが実は違う」とか、「すぐ会社を辞めてしまうのでマネジメントに疲れる」といった、 期待外れ 的なものが多くなっています。逆に、日本人と一緒に働くベトナム人からも、「日本人は礼儀正しいというけど私の上司は違う」とか、「本当に時間に正確かな」という、 残念な不満 が増えています。
このように、一部とはいえベトナムで暮らす日本人と日本が好きなベトナム人との間で誤解が生じるのはとても寂しいことです。そこで、皆さんに少しでも快適なベトナム生活を送っていただけるように、これから数回に渡り、日本人がベトナムでストレスを溜めてしまう原因をロジカルに分析し(ちょっと辛口)、ポジティブな気持ちになってもらえるように解説したいと思います。ベトナム滞在歴が3年未満の方々には、特に役立ててもらえるのではないでしょうか。
基本的なコミュニケーションに潜む日本語のリスク
日本人は、世界的にみてコミュニケーション能力(特に伝える能力)が高くない、と言われます。日本語では、相手の感情を傷つけないことへの配慮から、イエスやノーを明確に話さず、代わりに「ニュアンス」を高度なテクニックで伝えることにより意思疎通を図っています。例えばこんな会話があります。
Aさん:「次の日曜日、ご都合は?」(Next Sunday, is it convenient for you?)
Bさん:「その日はちょっと」(That day a bit)
※カッコ内はグーグル翻訳
グーグル翻訳で興味深いのは、日本語では主語も動詞もない「ご都合は?」を「is it convenient for you?」と正確に翻訳できる一方で、「ちょっと」を「a bit」としている点です。日本人であれば、この場合の「ちょっと」は「とても都合が悪い=無理」と解釈し、「都合は少し悪いけど調整可能」と思う人はいません。ここで使う「ちょっと」の意味は、次のようなニュアンスです。
私は、その日はとても都合が悪い。でも、普段はハッキリ「NO」と言わない私が、「とても都合が悪い」と強い意思表示をすると相手は不快に思うかもしれない。この場では、都合が悪い ニュアンスを優しく伝えて 、とても都合が悪いことを推し量ってもらおう。
ただし、いつも「ちょっと」が強い意味を持つとは限りません。次の中で、 ホンネで「少し」なのか、実は「とても」なのか 、見分けがつくでしょうか?
「ちょっと辛い」「ちょっと遠い」「ちょっと高い」「ちょっと寒い」「ちょっと嫌い」「ちょっと欲しい」「ちょっと行ってきます」
実は、このように誤解しやすい例は他にもたくさんあります。
「結構です」「いいです」 → 「(ホンネは)100%拒否」
「できればやって欲しい」 → 「(ホンネは)必ずやってほしい」
「明日か明後日までに」 → 「(ホンネは)ぜひ明日までに」
自分自身でも「タテマエ」を言っていることに気づかないかも
日本語では、程度を表すときにはとても曖昧な表現を使ってタテマエを言うことが多く、かつ、否定するときには弱めに、肯定するときには強めに表現する傾向がある、ということを意識しないといけません。さらに、フルセンテンスに比べると半分くらいを省略してしまうため、外国人とのコミュニケーションではとても誤解が生じやすいリスクがあります。
大学を卒業して会社で働き始めると、上司から、「行間を読むこと」や「1、3、5を聞いて10までわかること」を学びます。つまり、上司は半分しか言わないので部下は上司の言いたいことを 「忖度(そんたく)」 します。部下は想像を膨らませて残り半分を理解して、上司の期待に応えた社員だけが褒められる、という特殊な文化の中で育ちます。日本人同士であれば、「伝える能力が半分」でも「聴く能力が2倍」あるために会話が成立するのです。しかし、外国人との会話ではどうでしょうか。
日本人同士のコミュニケーション
日本人と外国人とのコミュニケーション
2月中旬、日本からの一時帰国の戻り便で日系の航空会社を利用しました。エコノミーシートの最前列に座ると、すぐ目の前にはビジネスクラスとの間を遮るカーテンとそれについての説明の札がありました。書かれていた英語と日本語のニュアンスが違っていて面白いのでご紹介します。
英語 「Business Class Passengers Only」
日本語 「これより先はビジネスクラスです」
英語では「Only」を使うことで、明確に「禁止」を表現しています。しかし、日本語では「ここから先は違う領域」と表現するだけで「入ったらダメ」という記載がありません。それでも、日本人であれば自動的に「特に事情がなければ立入禁止」と解釈し、すぐ下の英文を読んでさらに認識を深めることでしょう。
ベトナム語は文法的には英語に似ています。また、ホンネを言う文化です。ダメなことは明確に「ダメ」と言わないと理解できないはず。加えて、理由も丁寧に説明しないと誤解が生じる原因になります。
「10分遅刻はダメでも、なぜたった1分の遅刻がダメなの?」
→(日本人はルールだと思って納得する)
「ミスはしたが、なぜ今日残業しないといけないの?」
→(日本人なら誠意を示して残業する)
まとめ
ほんの少しのコミュニケーションミス(誤解)で人間関係がぎくしゃくしてしまうことは珍しくありません。加えて、ベトナム人はプライドが高いので、理解していなくても「わかりました」と応じる場面も多々あります。日本が好きで悪気がないベトナム人と付き合う上で、日本人はストレスを溜めないために、
?省略しないでしっかりと説明・意思表示 |
?理解したかを注意深く確認 |
?説明した通り行動しているかも観察 |
することが重要です。特に、「ちょっと」など、程度を伝えるときにはちょっと注意が必要です。
ロジカルに分析し超ポジティブに生きる[ロジ・ポジ]。
次回もご期待ください。