こんにちは、G.A.コンサルタンツの関です。大分ご無沙汰しております。出だしから個人的なお話で恐縮ですが、実は長年住み慣れていたホーチミン市を昨年末に離れ、今は生活の拠点がハノイ市へ移っています。引き続きホーチミン市には頻繁に出張で顔を出しておりますが。そういった事情もありまして、前回の執筆から本当に長く空いてしまいました…申し訳ありません、ただの言い訳でございます。
折角ですので、こうしてホーチミン・ハノイの両方を経験させて頂いているからこそ感じられる、南北のマーケットや人材タイプの比較などを今後のテーマにしていければと思っております。改めまして宜しくお願い致します。
ベトナム人の転職動機スイッチ
この3月、4月にかけては私自身の周りでも色々な方が帰任しました。丁度人が入れ替わる時期なのでしょうね。機を同じくしてベトナム人の中でも辞職・転職が1年の中で一番起きやすい季節で、ここでも人の入れ替えが起こっています。ただ、パフォーマンスがそこそこという人はいいとしても、中核のスタッフがドンドン辞めてしまってはダメージが大きすぎますよね。なぜそういう状態が起こるのでしょうか。
海外マネジメントの1つの問題として、優秀なスタッフを採用するのと同じくらいのウェイトで重要視されているのが、リテンション―従業員繋ぎ止め策です。例えば日本人的な感覚では、職務上で相当大きな失敗をした時、また生活環境が大きく変わって現職を続けることが難しくなった時に転職を意識します。つまり問題が起こった時に初めて転職動機が起こってくるのが日本人の考え方です。
一方で、ベトナムをはじめとした東南アジア圏の国々では、この転職動機スイッチが違うところについている、いや、むしろずっと付けっ放し状態とも言えるかもしれません。問題が起こったから転職を考えるというより、「現職よりもっと良いところはないかな」と考えながら仕事をしています。このスタンスの違いは非常に大きいです。
ベトナム人従業員の繋ぎ止め策
そして、この「もっと良い」をどう捉えるのかがなかなか厄介です。待遇条件、職場環境、仕事の面白さ、どれなのかわかりません。もしかしたら全てが該当するのかもしれません。弊社に登録に来られる方との第一次面談でもよく見られるのですが、何を求めて転職をするのかはっきりしていない方が多いのです。
以前実施したベトナム人求職者への意識調査の結果では、現職を続けている一番の理由は何か、という問いに4分の1くらいの方が「他に適当な仕事が見つからないから」という回答を選択していました。漠然と転職活動をしている人は日本人が思う以上に多いと考えた方がいいでしょう。
まだ企業勤めの文化が根付いてない点、歴史的にも組織は個人を守ってくれないので自ら守っていくしかないという自衛的DNA、これらの背景が重なり合い、今の就業感を形成しています。日本人とは大きく発想の根底にあるものが違っています。
そこで、リテンション策を考えるときには、まずはスタッフ目線に立ってみて、ベトナム人スタッフを留まらせる「アンカー(=錨)」を作っていくことをおすすめします。例えて言うと、日本での辞職防止のアプローチは病気の治療、ベトナムの場合は病気の予防、と考えることができます。
次回は病気予防策としてのそのアンカーについて、どういった施策があるのか、カテゴリーや具体的事例を交えてお話をしたいと思います。