皆様、こんにちは。SCS Global Consultingの尾崎と申します。今回は会計税務コラム第2回として、利益はあるのに何となく余裕がない、という事態について説明したいと思います。
勘定合って銭足らず
今回のタイトルを読んで、「黒字倒産」を連想された方は会計リテラシーと想像力に富んだ方かと察します。普段の日常生活では滅多に聞くことのない言葉ですが、経理に携わっていたり、会社経営をされていたら、必ず知ることになるワードかと思います。
黒字倒産とは、文字通り、決算書上では黒字(利益)が出ており、順調な経営状況に見えるにも関わらず倒産してしまう会社のことです。「勘定合って銭足らず」ということわざは、まさにこの状況を例えています。
黒字なのに倒産、一見すると矛盾のように見えますが、全く矛盾ではなく、また珍しい話でもありません。インターネットで検索しても一部上場企業が黒字倒産した近年の例も出てきますし、中小企業では取引先の倒産により自社も連鎖的に…といったことはよくあります。
原因は現金不足、いわゆる資金ショートです。
利益出せば財布がホカホカ…ではない
では何故利益を出しているにも関わらず現金が足りなくなるのでしょうか。
その要因は多々ありますが、主要因は、「売掛金」の管理にあります。売掛金とは、商品を売上げた時点から実際に顧客からの入金を確認するまでの間の状況のことをいい、後払いによる債権の一種です。現金でその場で取引するのではなく、掛け(後払い)で取引をすることにより生じます。日常生活でいうところの、飲み屋の「ツケ」は、会計用語の掛けを意味します。
例えば、100円で掛けで仕入れた商品を150円で掛けで売上げた場合、50円の利益が出ます。
ただ売上の時点では、代金を回収しておらず売掛金の状態ですので手元にはお金がありません。早く回収したいのですが、なかなか支払ってくれないお客さん。しかし仕入元には代金を支払わなければいけない。あれ、利益はあるのに手元にお金が無い…という状況になります。
これが黒字にも関わらず資金ショートする原因の一つで、この状況がひどくなると仕入元への支払いが不能になり、信用を失い、取引を止められ、最悪の場合は会社が倒産することになります。
これを少しでも避けるためには、お客さんからお金を回収すること、つまり売掛金の管理を徹底すること、が重要になります。
営業至上主義は注意
会社を経営し成長させていくためには、顧客を開拓して売上を積み重ねていくことが絶対条件になります。何よりもまず売上をあげること、これは経営する上で確実に必要な感覚かと思います。そのために地道に営業を行い続けることも非常に重要なのですが、営業がうまくいき、新規契約が成立すれば目的達成かというと、少し異なります。営業成績が上がれば上がるほど、会社の決算書上での成績はよく見えますが、お金の残高がプラスになっているかは別問題だからです。
契約が成立し、請求書を発行し、売上が伸び、そしてそのお金を回収することでようやく取引が完結します。お金を回収して初めて会社の財布が潤い、お金を回収して初めて従業員にも給料が払えます。
ベトナムでは通常の国内取引であれば本体価格に10%のVATを付して請求します。この10%分は預り税金と言われ、本来買い手が収めるべき税金を売り手が預り、代わりに税務署に納める義務があります。日本の消費税も同様ですが、負担者と納税者が異なる税金で、間接税と言います。そのため、もし顧客が潰れてしまい代金を回収できなかった(貸倒れた)場合、売った会社がその分を自己負担で納税しなければいけません。本来もらえるはずのお金はもらえない上に、税金まで払わなければいけない…代金を回収できないとかなり酷です。
年齢調べ表と資金繰り表
上記にて代金を回収することの重要性を述べさせて頂きましたが、では実務上はどうやって管理していくのか、というと、主に以下2つの管理表を作成します。
<売掛金の年齢調べ表(通称Aging List)>
名前の通り、未回収になっている売掛金の年齢(請求日から何日経過しているか)を把握するリストです。長期間にわたって支払いがなく、取引先に督促が必須な売掛金がひと目でわかる資料になります。
<資金繰り表(通称Cash-flow Projection)>
資金繰り計画表と実績表の2つから成ります。出来る限り細かく計画をし、実績との差異を分析します。ベトナムでは1・4・7・10月には各種税金を、2月にはボーナスを、と各月でも出費が異なります。適切に計画していないと、いざ税金やボーナスを払おうと思っても手元にお金が無いという状況が生じます。
人員豊富な大企業であれば上記の管理は適切に行われていることが多いですが、小規模の会社、個人事業主の場合は、疎かになっていることもあります。上記のようなざっくりとした説明で恐縮ですが、少しでも今後の参考にして頂ければ幸いです。