「幼いころからホーチミン市で暮らしてきた私たちきょうだいがここまで生きてこられたのは、ご近所さんや地元当局の支えと助けがあったからです」と、ホーチミン市3区在住のチャン・バー・ロックさん(56歳)は「隣人愛」について語る。ロックさんはLGBTコミュニティに属するトランスジェンダー女性で、ろう者でもある。
(C) thanhnien |
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ホーチミン市の中心部、3区ディエンビエンフー(Dien Bien Phu)通りの小さな路地に、朝から賑わう市場がある。ここで商売をしている人たちに「路地の入口で飲み物を売っている、ろう者のきょうだいの家はどこですか?」と聞くと、誰もが知っているらしい。「この家は苦労しているよ!贈り物でも渡しに来たの?」と聞き返しながら、熱心に道を教えてくれる。
朝市に向かう人やバイクの流れと一緒に路地の奥へと進み、さらに小さな路地に入っていくと、ロックさんきょうだいの家にたどり着く。ロックさんの家は広さが24m2にも満たないが、ここで10人近くが暮らしている。
ロックさんは生まれつきろう者で、9人きょうだいのうち5人がろう者だ。ロックさんのほかに、同じくろう者の姉2人も一緒に暮らしている。ロックさんは、線香の煙が立ち込める祭壇を指さしながら、兄のチャン・ディン・チュアンさんが数日前に73歳で亡くなったばかりなのだと身振り手振りで伝える。
今から数か月前のこと、ロックさんは上咽頭がんと診断された。病院で数日間治療を受けて、健康状態は少し安定し、顔色も良くなった。しかし、姉のチャン・ティ・クックさん(65歳)は、この病気は予測不可能であることから気が気でない。