その病院で医師からは、ARV薬を毎日きちんと飲み、血液中のウイルス量を200コピー/mL未満、つまり検出限界値未満にすることができれば、性交渉によってHIVを移すことはない、という説明を受けた。
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それから治療薬を飲み続け、夫婦で健康診断を受け、検査を受けることを繰り返し、父親になる条件は整った。そうして妻は妊娠し、娘が生まれた。
「子供も、妻も、HIVに感染していないという検査結果を受け取った時は、胸がいっぱいで言葉が出ませんでした」。それから数年後、夫婦には息子が生まれ、いま2人の子供は、元気に学校に通っている。
何よりも辛いのは、人々の眼差しだ。飲食店で、別のHIV感染者が使った食器を、店主が川に投げ捨てる光景を目にしたこともある。自分がHIVであることは、できるだけ周囲には話さないようにしている。子供が普通に学校に行けるように。
ミンさんは、自分は「あまりにも幸運だった」と言う。仲間たちはもう何人も死んでしまったし、そうでなくても結婚して、子供をつくった人などいない。理解者を見つけるどころか、人は近づこうとさえしない。
いまミンさんは、そんな「友」達に、「きっとできる。オレもできたんだ。毎日きちんと薬を飲めばいいだけなんだ」、そう励ましていく仕事をしたいと思っている。生き証人として。
最初は怖くてたまらなかった。だが元気に生きてもう12年、幸せな家族がいる。今も毎月病院に行き、無料の薬をひと月分もらう。
夜9時の、毎日の「サプリ」は欠かさない。