夫妻によると、それは夫妻の祖父母の時代の店の看板で、異国の地で新しく店を開くのに合わせて、家族の思い出の一部を残したいという思いでの注文だった。古い看板はフォントの輪郭の多くが消えてしまっていたため、バオさんは元の看板と同じものを作るため、文字を収集・補足する作業に時間を費やし、1か月かけて看板を完成させた。
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現在、バオさんはホーチミン市内の各区や近隣の省、さらには海外からも、毎日10件以上の注文を受けている。しかし、すべてバオさん1人の手作業で行っているため作業に時間がかかり、完成までの待ち時間はかなり長くなっている。
8月のある日の午後、ディン・グエン・スアン・ガンさん(女性・31歳)は、自分の食堂の看板を注文するため、南部メコンデルタ地方ベンチェ省からバオさんの元を訪れた。ガンさんは、バオさんの仕事ぶりを見ると職人としてのこだわりと熱意が感じられると話す。
また、2020年からバオさんを知っているというレ・ティ・ゴック・アインさん(女性・57歳)は、初めてバオさんと話したときに彼の誠実さと仕事の信頼性を感じ、次回訪れた際に看板4枚を追加で注文したという。「バオさんを知ってから、海外にいる友人たちにもバオさんの店を何度も紹介しているんですよ」とアインさん。
バオさんにとって、この仕事を続ける中で大変なこともあるが、それでも手描き看板を見て客が喜んでくれることが、この仕事を続けるモチベーションになっているという。
「いつか若い人たちが古き良きものの価値に気づき、それらを取り戻し、技術を学び、そして手描き看板が再び人気を博すことを信じています」とバオさんは語った。