新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の襲来で、ホーチミン市の「資源回収(ベーチャイ=ve chai)集落」に暮らす人々のほとんどが感染者(F0)となり、多くが生き死にの境に直面した。集団感染(クラスター)の発生から2か月が経った今、ホーチミン市はニューノーマル(新常態)に移行し、住民たちはウィズコロナの生活に喜びを感じる一方で不安もぬぐい切れずにいる。
(C) thanhnien |
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「ズアさんは入院してそのまま亡くなったのかもしれないね。彼が生きているのか死んでいるのか誰も知る由もないけれど、皆気にかけて連絡を待っているんだ」。
「彼は身体も弱かったしね。ここの皆は彼のことをあまり知らないんじゃない。何歳だったかな」。
「いやだ、まだ70歳そこらだったと思うけれど。元気にバイクタクシーの運転手をしているのを見たよ」。
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この「ベーチャイ集落」は、ホーチミン市ビンタイン区26街区にあり、「ルオン(Ruong)集落」とも呼ばれている。集落の奥の川沿いにあるグエン・バン・ズアさんの部屋は、ここ2か月間静かなまま扉が閉まっている。
ズアさんが感染者となって救急車で搬送された日から、住民たちは気が気でない。ズアさんは何年も1人暮らしで、部屋を訪ねてくる知人もいなかった。
ズアさんだけでなく、この集落の28部屋に暮らす人々のほとんどが、老若男女問わず感染者となった。検査で陰性だったのは3人だけで、この3人は隔離施設に移送された。残りの人々は皆、自宅療養となった。この集落がこんなにも静かだったことは、今だかつてなかった。
ここが「ベーチャイ集落」と呼ばれている所以は、部屋を借りている住民の9割が資源回収の仕事をしているためだ。残りの住民はミエンドン(東部)バスターミナルで荷物運びをしている。住民の出身は北部、中部、南部メコンデルタ地方と様々だ。
ホーチミン市がニューノーマルに移行してからも、多くの人がすでに検査で陰性の結果が出ていながら後遺症に苦しんでおり、資源回収の仕事に復帰できないでいる。