チュオンさんらのボランティアチームがサポートしているのは、経済的に困難な人たちだ。有料の葬儀サービスに依頼するお金もなく、そもそも感染者がいる家庭や封鎖区域に足を運んでくれる葬儀屋もほとんどないためだ。
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ある日の21時。チームはその日5件目の作業に取りかかっていた。故人の自宅はホーチミン市ゴーバップ区の封鎖区域内の細い路地裏にあった。家族全員が感染し、母親が亡くなったという。
路地裏の入り口で長男が待っていた。「家族全員が陽性になり、母は今朝までいつも通りだったんですが、突然吐き気と胸の圧迫感、息苦しさを訴えてそのまま死んでしまったんです」と長男は泣きながらチームに話した。
「母は私たち兄弟が結婚する日を待ち望んでいました。この5~6年は母子3人で質素に暮らしてきて、母がいなくなった今、どうやって生きていけばいいのかわかりません」と、母親の遺体が車に運ばれていく様子を見ていた末の息子も泣き出した。
ボランティアチームのグエン・ティ・ハー・ニーさん(25歳)は、道路にひざまずいて母親の遺体を見送る息子の肩にそっと手を置いた。遺体は軍隊が管轄する火葬場に運ばれ、ホーチミン市軍事司令部が火葬して遺骨を遺族に返す。
この2か月間、ニーさんとチームメンバーの約40人は、新型コロナで命を落としたたくさんの人たちを見送ってきた。メンバーのほとんどが遺体の収容や搬送の仕事をするのは初めてで、本業では別の仕事をしている。ニーさんの本業はオフィスワーカーで、他に銀行員やカフェのオーナー、車の修理工と様々な職業のメンバーがいる。
「チームの仕事がなくなって、チームが解散する日が訪れたら、それはつまり、ホーチミン市が元気を取り戻したということです。きっと幸せな日になるでしょう」とニーさんは語る。