中学2年生(日本の中学1年生)になると、ハインさんは他人が「腕もないのに何のために勉強しているのか」という軽蔑的な眼差しで自分を見ていることに気付き始めた。途端に自信をなくし、自暴自棄になって友人と喧嘩することも増え、中学2年生の終わりからは1年間学校を休んだ。しかし、その後再び学校に行くようになり、ITエンジニアになるという夢を叶えるために勉強する決心をした。
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ハインさんが通っていたディンクアン高校で3年生の時の担任だったタイン・タム先生は、ハインさんの高校時代についてこう語った。「ハインさんには大きなエネルギーがあります。腕のない彼が他の生徒たちと一緒に高校まで進級するということは、大変な努力が必要です。ハインさんは障害を持つ唯一の生徒でしたが、友人たちとも仲良くなり、大きな自信と活力に満ちた高校生活を送っていました」。
昨年、ハインさんは大学を受験せず、自分で仕事を探して自立したいと両親に申し出た。まずハノイ市で、次にホーチミン市で仕事を探し、いくつかの広告会社に応募して就職先を見つけた。そして、パソコンを使って多くの仕事をこなす中で、ハインさんはITエンジニアになるという幼い頃の夢を思い出した。
「これまで自分が頑張ってきたのは、ITエンジニアになるという夢を叶えるためであり、そのためにはもっと学校で勉強する必要がある」とハインさんは考えるようになった。そして今年の受験の時期に、ハインさんは再び学校に通いたいと両親に申し出た。
母親のホップさんは心から喜び、息子をサポートした。「他のきょうだいは学業が思わしくなくても雇われ労働者として働くことができますが、ハインは勉強を頑張ってこそ、自分自身に合う仕事を見つけることができますから」とホップさんは語る。
9月、ハインさんはドンナイ省ビエンホア市に1人でバスに乗って行き、ラックホン大学の情報技術科に願書を提出した。そして見事に入学を果たし、授業料も全額免除された。友人たちからは「ペンギン」と呼ばれ、親しまれている。
新聞記事でハインさんのことを知ったビエンホア市の麺屋の主人、ラム・キム・フンさん(65歳)は、実家を離れて大学生活を送るハインさんの面倒を見たいと思い、自らハインさんを探し当てた。そしてこのほど、ハインさんはフンさんの自宅に居候するため、大学の寮から住まいを移した。
「ハインの力は知っていますが、この子がどうやって生活しているのか、密かに観察しています。ここに越してきて以来、ハインは誰の手も借りず、何でも1人でこなしていますよ。ブンを食べた後の器を片付ける以外はね。器は重くて滑りやすく、割れるのが怖いから」とフンさんは話す。
ハインさんは、1年間就職していた経験を通じて成長し、自信もついた。まだ入学したばかりだが、プログラミング言語について積極的に調べ、資料を読み漁っている。「すべてが真新しく、心配もありますが全力を尽くします」とハインさんは笑った。