その年のテトが過ぎ、ギアさんの小さな店がオープンし、両家ともに2人の関係を知ってから、ロイさんはついにテトに合わせてコントゥム省のギアさんの実家を訪ねた。いつも自信満々で楽観的なロイさんが、このときばかりは緊張していた。
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元日の数日前、ロイさんは初めて恋人の実家の門の前に立った。ギアさんが大きな声で呼ぶと、家の中から両親が笑顔いっぱいに出迎えてくれた。ロイさんは、自分を待っていてくれる家族ができたような気持ちになり、心を打たれた。それは、今までに経験したことのない感覚だった。
「テトの1週間を家族と一緒に過ごす中で、ギアの両親は僕の両脚のことも、片腕のことも決して尋ねようとせず、息子のように接してくれました。僕は、これが自分の家族になり、今後自分が頑張っていくための原動力になるのだろうと感じました」。
2020年10月10日、2人は結婚式を挙げた。披露宴にはロイさんの選手仲間やギアさんのデザイナー仲間など、多くの人が集まった。披露宴では、新婦のギアさんが会場の後方に1人で現れ、新郎に対する想いを込めた歌を歌いながらステージに向かって歩いた。ステージ上では、新郎のロイさんが義足をつけ、スーツを着て待っていた。そして、ロイさんは花嫁を迎え入れた。
2年前は誰のことも好きにならず、誰とも結婚しないと思っていたロイさん。披露宴のステージに立ち、かけていた眼鏡を外した。客席にいる人々を見ると泣いてしまいそうだったからだ。しかし、花嫁の歌を聴いたロイさんはうつむいて目に涙を浮かべた。ロイさんのそばで最後のフレーズを歌い切ったギアさんの目にも涙が光っていた。
10年も前からロイさんにとって兄のような、友人のような存在である歌手のグエン・フィー・フンさんは、2人の縁を知って2人のために歌を作り、披露宴で歌った。フンさんはこう語る。「私たちはいつも人生の中に物語を探し求めていますが、それはそう遠くないところにあるということを、2人の愛が証明してくれました。この奇跡が起きたのは、ギアさんにとてつもなく深く、人間的で広い心があったからです」。
ギアさんは家族や友人たちが見守る中、「おそらく私にとって、この結婚式、この人生、そしてこの夫、すべてのことが、これまでに望んだ中で最も完璧で素晴らしいことです」と語ってから、ロイさんと腕を組んで、乾杯をしに客席へ向かって歩き出した。