「周りの人たちは『頑張って乗り越えて』と励ましてくれましたが、僕はずっと前から頑張っていました」とクエンくんは話す。
(C) vnexpress |
(C) vnexpress |
(C) vnexpress |
葬儀のとき、クエンくんは黒い喪服を着て12時間近くもじっと立っていた。埋葬が終わると自宅に帰って、お粥を自分で作って食べた。
父方の伯父の妻は「おばあちゃんが帰ってくると、クエンくんはおばあちゃんに駆け寄って抱きしめるんです。そのときの顔は生き生きとしていますよ」と語る。
ある日曜日の午前5時、学校が休みの日にもかかわらず、クエンくんはいつもの習慣で早く起きた。線香立ての後ろに置かれた父親の遺影を静かに見つめてから、毛布とござを畳んで部屋の隅に寄せた。
屋根にも床にも穴が空いた自宅には、皆からもらったいくつかの鍋と籠、お椀と箸があるだけだ。クエンくんは台所に行き、冷えたご飯をよそって食べた。 食べ終わると、今にも地面に落ちそうになりながら掘っ立て小屋に入ってシャベルを取った。それからシャベルを丘へ運んでキャッサバを掘り、売りに出かけた。
あるときは、自宅から5km離れたところでキャッサバを1袋分掘り、持ち帰ろうとした。しかし、下り坂にさしかかると大きな袋に圧迫されて転げてしまった。誰かが助けてくれたが、やっと立ち上がってもまだ笑いが止まらなかった。この仕事はクエンくんにとって唯一の楽しみでもあり、大きなキャッサバが掘れると嬉しく、1kgあたり1000VND(約4.8円)で売れる。
夏には、地元の人たちについてタケノコを採りに行く。1回に3~4kgを採り、2万VND(約96円)を得られるが、タケノコは夏しか採れないため、一年中収穫できるキャッサバがクエンくんの主な「収入」になる。暇なときは村の人の手伝いで米袋を運び、その代わりに米をもらう。さらにテト(旧正月)や祝日には、村の当局から5~7kgの米を支給してもらっている。