ある晩、学校から遅く帰宅すると、父親が1人で静かに座り、お酒を飲みながら泣いていた。それを見て、リンさんの目から涙があふれ出した。
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11年生(高校2年生)のときに両親が離婚し、母親の代わりに叔母が世話をしてくれるようになった。叔母はリンさんの性別が「普通」と違うことに気づくと激怒し、リンさんを1日中ひざまずかせた。
「その時はとても悲しかったですが、絶対に泣かないと決めていました。なぜなら男性は必要なときにしか泣かないからです」とリンさんは回想する。他人にあれこれ言われることは構わなかったが、家族に自分の境遇を蔑ろにされることには心が痛んだ。
リンさんは、LGBTのコミュニティに参加するまで、そして本当の自分に誠実に生きなければならないのだと気づくまで、逃げ道のない、曲がりくねった人生を送ってきた。内にこもる代わりに、リンさんは持前の歌声を活かして学校の芸術活動に積極的に参加した。
大学に入学すると、自分の収入のため、そして5歳年下の弟の養育費の足しにするため、アルバイトを始めた。大学2年生のとき、初めての彼女ができた。彼女を家に連れて帰った日、父親は一言もしゃべらず、さっさとご飯を食べてどこかに行ってしまった。
父親に少しずつ慣れてもらうため、1週間続けて彼女を家に連れて帰り、ご飯を作り、掃除をした。そうこうするうちに父親も徐々に受け入れるようになり、「きっとたくさんの人が本当のお前を受け入れてくれるよ」と言ってくれた。